快走を確信させるほどの“仕上がり”

エリザベス女王杯を制したレガレイラ(c)netkeiba
1番人気に支持された4歳牝馬レガレイラ(父スワーヴリチャード)の、レース前の期待をはるかに上回る完勝だった。
この時まで10戦[4-0-1-5]。連戦連勝のチャンピオン牝馬ではなく、関西圏への遠征競馬に良績がないなど、不安視される一面もあったが、今回の最大の勝因は、改めてその秘める資質を「このデキなら100パーセント発揮できるに違いない」と確信させる素晴らしい気配の仕上がりだった。
パドックでは、強敵相手のGIなので、高揚する気配を隠せない牝馬もいたが、レガレイラは直後に激しい戦いを控える牝馬とは思えないほど落ち着き払っていた。平然とパドックを周回するレガレイラは、明らかにこれまでのレガレイラとは一線を画す、多くのチャンピオン牝馬(女王)を連想させる雰囲気を漂わせていた。この姿をみて、快走を確信したファンが多かったにちがいない。
素晴らしい状態に仕上げた陣営の手腕が絶賛されると同時に、今回が4度目の騎乗となる戸崎圭太騎手はレガレイラの能力を信じ切っていた。予測されたように、主導権を握った武豊騎手の作り出したペースは、前後半「59秒9-(12秒1)-59秒0」=2分11秒0。コーナーも坂もあるので前後半がまったく同じということはないが、ほぼ一定の平均ペースに近い。そこで京都のエリザベス女王杯レコードとなった。
戸崎騎手は、互角の好スタートを切ったので、有馬記念と同じように中団より前の好位追走かと思えた。しかし、中団より少し後方の外に控えたうえ、馬群に動きが見えた3コーナーでも動かない。通過順の取り方の角度にもよるが、3コーナー過ぎでは後方6番手くらいだったと思える。
昨年のエリザベス女王杯や、有馬記念、さらには今年の宝塚記念と違って、馬群の中に入れないコース取りはオールカマーで経験済み。直線は芝状態のいい外に回るのも予定通りか。これまでのレガレイラとは思えない、鋭い切れ味を持続させることに成功した。これでGI制覇は3年連続の3勝目となった。
陣営は有馬記念連覇を視野に入れている。今回と同じようなコンディションが可能になるとき、「シンボリルドルフ、オグリキャップ、オルフェーヴル‥‥」などと並ぶ史上7頭目の「有馬記念2勝馬」となるかもしれない。そうなると牝馬では史上初の大記録だ。
直線一旦は先頭に立って2着のパラディレーヌ(父キズナ)は、この平均ペースの流れに巧みに乗ってのすばらしい騎乗。まだキャリアの浅い3歳牝馬だから立派だ。内ラチ沿いの芝は明らかに良くなかった。それで一旦は勝ったにも近いレース運びで、従来の京都のレースレコードと0秒2差。キズナ産駒のさらなる成長力に期待したい。
同じ3歳馬リンクスティップ(父キタサンブラック)も小差の4着。こちらも成長力は十分にある。3歳世代は牡馬も牝馬もハイレベルなのだろう。
3着した6歳馬ライラック(父オルフェーヴル)は、さすが。ステイゴールド系の真価をフルに爆発させる上がり最速タイの「34秒2」だった。4回も頂点のエリザベス女王杯に出走した牝馬はライラックが5頭目。驚くなかれ「2分13秒3→2分12秒9→2分11秒6→2分11秒4」。毎年、走破時計を短縮しているからすごい。
この女王杯には芦毛のスマートレイアー(父ディープインパクト)が「4歳と5歳、7歳と8歳時」に合計4回挑戦した記録がある。ライラックは「今回がラストチャンスくらいの気持ちで臨んだ」とされるが、このあと果たしてどうなのだろう。無事に引退して欲しいと思うが、まだがんばって欲しい気も少し生じてしまった。