スターアニスが阪神JFを制覇 血統面からは不利な条件で高い能力を発揮
血統で振り返る阪神JF
【Pick Up】スターアニス:1着
父ドレフォンはジオグリフ(皐月賞)以来となる芝のGI馬を出しました。芝78勝、ダート316勝という通算成績が示すとおり、圧倒的にダートの成績が良好で、たとえば現時点でフォーエバーヤングに次ぐダート界ナンバー2と目されるミッキーファイト(帝王賞、JBCクラシック)は同産駒です。
スターアニスは父の5世代目の産駒。この世代は父の初年度産駒の活躍を受けて交配されたため、種付け料は前年の300万円から700万円と倍以上に跳ね上がり、なおかつ血統登録頭数も前年比24頭増の120頭。繁殖牝馬の質と量が上昇しているため産駒成績も優秀で、スターアニスのほかに兵庫ジュニアGP(JpnII)を勝ったトウカイマシェリ、新馬戦-ヤマボウシ賞を連勝したペルセア、黄菊賞を勝ったノチェセラーダなど、産駒は粒ぞろいです。
母エピセアロームはセントウルSと小倉2歳Sの勝ち馬。2011年の阪神JFに出走した際は8着と敗れていました。3代母サクラファビュラスはサクラローレル(有馬記念、天皇賞(春))の半姉です。
7馬身差で勝ち上がった小倉の未勝利戦(芝1200m)、レコード決着のクビ差2着だった中京2歳S(芝1400m)のレースぶりを見るかぎり、マイラーというよりはスプリンターに近いスピードタイプではないかという印象がありました。また、レース前の時点でドレフォン産駒は阪神芝1600mで35戦して3着が最高着順と、決して相性のいいコースとはいえません。
阪神JFは前走からの距離延長組より距離短縮組の成績が優れているように、1200・1400mで好走してきたスピードタイプは苦戦しがちな傾向があります。そうした不安材料を跳ね返すくらい、スターアニスの能力がずば抜けていたということでしょう。将来的にはマイルもこなせるスプリンターとして相当な活躍が見込めると思います。
血統で振り返る中日新聞杯
【Pick Up】シェイクユアハート:1着
母ルンバロッカは優秀な繁殖牝馬で、これまでデビューを果たした14頭の産駒のうち10頭が勝ち上がり、シェイクユアハートのほかに皐月賞6着馬ロッカヴェラーノ、毎日杯5着馬クロスカップリングなどを産んでいます。
母は現役時代、イタリアで日本の桜花賞に相当するレジーナエレナ賞(GII・芝1600m)を勝ちました。母の父スリペカンはロベルト系ながらスピードと仕上がりの早さが武器なので、父ハーツクライのスタミナとうまくマッチしています。
母方にファビュラスダンサーを持つハーツクライ産駒はニックスで、出走18頭中14頭が勝ち上がり、シェイクユアハートのほかに阪神大賞典を勝ったギュスターヴクライ、日経新春杯を勝ったカポーティスターが出ています。
3勝クラスで1年8ヵ月ほど足踏みしましたが、オープンクラスに昇級してからも息切れすることなく、5歳暮れにして初重賞制覇を成し遂げた点は、父ハーツクライが伝えた成長力を感じさせます。
知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【トウショウボーイ】
日本競馬にスピード革命をもたらしたテスコボーイの代表産駒。皐月賞、有馬記念、宝塚記念などを制覇し、芝1600m、芝2000m、芝2500mで日本レコードを樹立しました。
種牡馬としては三冠馬ミスターシービーを筆頭に、ダイイチルビー(安田記念、スプリンターズS)、シスタートウショウ(桜花賞)、アラホウトク(桜花賞)、パッシングショット(マイルCS)、サクラホクトオー(朝日杯3歳S)、ダイゼンキング(阪神3歳S)などを出しました。
ミスターシービーは母の父が凱旋門賞馬トピオだったため日本ダービーや菊花賞を勝ちましたが、基本的にはマイラー血統で、スピードと瞬発力が持ち味でした。
父系を伸ばす力を欠いていたため、残念ながらサイアーラインは残っていません。現在では牝馬を通じてその血が残っています。ウオッカ、スイープトウショウ、レイパパレ、サンビスタなどの名牝はトウショウボーイを含んでいます。現役種牡馬ではステルヴィオ、ジョーカプチーノなどがこの血を抱えています。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「日本に輸入された名種牡馬の全兄弟にはどんな馬がいますか?」
日本競馬がいまほど豊かでなく、知名度も低かった時代は、海外へ出て種牡馬を買うのも一苦労でした。まともな馬はなかなか売ってもらえず、値札をつけてくれたとしても高くて手が出ません。そんなときどうしたかというと、名馬の全兄弟を買ってくる、というのがひとつの選択肢でした。ただし、競走成績が貧弱であるか、種牡馬として微妙な成績であるか、そのいずれかである場合が多かったため、日本での種牡馬成績は総じて芳しいものではありませんでした。
ノーザンダンサーの全弟ノーザンネイティヴとトランスアランティック、ボールドルーラーの全弟ナスコ、サーアイヴァーの全弟ロードリージ、ニジンスキーの全弟ミンスキー、ブラッシンググルームの全兄ベイラーン、アリダーの全兄ホープフリーオン、パーソロンの全兄弟のミステリー、ペール、マイフラッシュなどなど。
ベイラーンとホープフリーオンは、日本に輸入されたあとに全弟が名馬となったので、厳密にいえば上記のパターンとは異なります。
ミンスキーはアイルランドでG3を2勝と、兄ほどではないにしろ重賞級の実力を備えていたため、わが国でヨシノスキー、シルクスキーなど5頭の重賞勝ち馬を出し、直系の孫ダイナカーペンターは重賞を2勝しました。ホープフリーオンの息子キヨヒダカは安田記念、京王杯AH、新潟大賞典を制覇したほか、中山ダ1800mで1分48秒5というレコードタイムを樹立。このタイムは42年後の現在も破られていません。