
▲松本好雄オーナーと武豊騎手の物語(撮影:山中博喜)
いよいよ今週末に迫った有馬記念。春のグランプリ・宝塚記念を制したメイショウタバルと武豊騎手のコンビが参戦します。
38年前のデビュー当時から武豊騎手を支え続けた「メイショウ」の冠名。今年8月に亡くなった松本好雄オーナーとの歩みは、多くの人を魅了してきました。人馬の絆が紡ぐ物語は今年、有馬記念という最高の舞台へ。天国の恩人へ勝利を誓う、魂の逃走劇に向けその歩みを振り返ります。
(構成・文:島田明宏)
「いや、まだまだ。明日があるから」──武豊騎手の覚悟
もう18年も前のことになるが、忘れられないやり取りがある。
2007年11月24日、武豊騎手はヴァーミリアンで第8回ジャパンCダートを制した。当時はジャパンCの前日(2004年は同日)に行われており、これが第8回。武騎手は、第2回をクロフネ、第5回をタイムパラドックス、第6回をカネヒキリで勝っており、8回のうち4回目の勝利をおさめたのだった。
最終レース終了後、私は地下馬道の入口で武騎手に「おめでとうございます」と声をかけた。
いつもなら笑顔で「ありがとうございます」と返ってくるのだが、このときは違った。
「いや、まだまだ。明日があるから」
表情を変えず、静かな目でこちらを見つめてそう言い、自転車に乗って調整ルームへと去って行った。
彼の言う「明日」とは、