偶然を予知することは困難だ。しかし競馬には、ときたまそんなことがある。
今年のダービーには、ダービー馬を父に持つものが5頭出走していた。この中で、圧倒的人気を背負ったフサイチホウオーは、共同通信杯を勝って皐月賞に駒を進めたところが父ジャングルポケットと同じという点で注目されたが、その皐月賞が1番枠で2番人気、しかも3着というところまで父と同じで、この偶然が人気を後押ししていた。父の18番枠と子の15番枠というダービーでの違いは、全く気にならず、それ以上に1番人気馬6連勝中という事実が光っていた。
当日は、安倍総理がプレゼンテーターで来場していて、現役総理としては小泉さん以来で3人目。その小泉総理のときの平成14年のダービー馬がタニノギムレット。その産駒は3頭もダービーに出ていたが、中で11年ぶりに牝馬の参戦と注目されたウオッカは、父と同じ谷水雄三氏の持ち馬、宰相観戦時の縁を思うと、こちらの方をと考え、さらに調べてみるとタニノギムレットもウオッカも3番枠、この偶然は無視できない。牝馬の64年ぶりのダービー制覇という快挙は、不思議な力でたぐり寄せられていたのだった。
しかし、ここまでは予知できたとしても、2着アサクサキングスまでは考えが及ぶことはなかったのではないか。強いて言えば、前の週のオークスを勝っていた福永騎手の勢いに目をつけるということか。大舞台になればなるほど、人馬の占める比率は近くなっていく。6対4から5分5分とまで考えていいと思っているが、これは自分の思いの中での判断なので、事前に申し述べられるものではない。当日のプレイから、その日の馬場をつかめているかどうか、これは競馬場に行っていないとわからない。フィール・ライヴの効用はこんなところにもあると思う。
偶然を予知するのは困難でも、先入観を強めるレース検討からの開放も大切なことだ。