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2歳牝馬の総決算

  • 2007年12月04日(火) 16時50分
 今年の2歳戦も、はや決算期を迎えました。その第一弾は阪神ジュベナイルF。まずはこのレースをジックリ回顧してみます。

 かなり評価を高めている記事も見られますが、時計面を冷静に見ていくと、それほど手放しで褒められたものではありません。前半3F34.4秒は昨年と同じ。その昨年は上がり3F34.8秒と速くまとめながら、3番手にいたアストンマーチャンや逃げたルミナスハーバーが2、3着に粘り、4角6番手からウオッカが早めに動いて差し切っていました。しかし今年は、反対に前が総崩れとなってしまって上がりが35.7秒と掛かってしまいました。勝ちタイムも0.7秒遅く、昨年の上位馬と比べると見劣るのは明白です。



 こう書くと、昨年のスーパーホースたちと比べるのが酷と思われるかもしれませんが、実はさらにマイナス材料が浮かんできてしまうのです。

 まず、これは私の試算ですが、去年よりも今年の方が馬場差が速いということ。1600mでは0.3秒くらい、去年より速い時計の出る馬場だとみています。去年は改装後の1週目で、かなり芝も深かったのと、路盤がまだ固められておらず最もクッションの利いた状態。クッションは利きすぎるとかえって走りづらくなります。それを思うと、時計の実質的な差はさらに開くことになります。

 また、同日の古馬500万下よりも0.4秒劣るのもマイナス点(このことからも、時計の出る馬場だったと言えるのです)。いくら1000万級の強さを持つリアルコンコルドのタイムといっても、これだけ下回っては…。さらに前日の1600万下より0.7秒遅いのです。昨年のウオッカは1600万下に匹敵してたので、クラスごとの相対的な比較でも、去年には遠く及ばないことになります。

 改修後まだ2回しか行なわれていませんが、改修後の阪神JFとしては、おそらくこれが水準か、水準のやや上程度の価値となっていくと思われます。その意味では、上位馬を過大評価するのは避けたいと思っています。

 もっとも、今後戦っていくのは同年同士。こと馬券という意味では、上位馬が世代をリードしていく立場になったのは事実でしょう。緩まない流れになりスタミナが求められる展開になったことで、1800mで牡馬相手に勝ち負けしてきたトールポピー(牝、父ジャングルポケット、母アドマイヤサンデー、栗東・角居勝彦)、さらに血統的には中距離向きのレーヴダムール(牝、父ファルブラヴ、母レーヴドスカー、栗東・松田博資)が1、2着となったのは納得。ともに当連載コラムをお読みの方はご存知のように、来年へ向けて、2000m以上での活躍を見込んで高評価してきた馬たちでしたが、こういう流れになれば出番ありなのは納得です。

 3着エイムアットビップ(牝、父アグネスデジタル、母ドリームクロス、栗東・矢作芳人)はイメージチェンジに成功し、脚をタメて差す競馬ができましたが、本来の持ち味は削がれた印象。やはり勝ち切るには前に行ってこそでしょう。

 負けてなお強しだったのは4着オディール(牝、父クロフネ、母キュンティア、栗東・橋口弘次郎)と7着カレイジャスミン(牝、父タヤスツヨシ、母ラピュセル、美浦・宗像義忠)。終始好位につけて、早めに動いて勝ちに行き、特にオディールはゴール寸前まで先頭を守りました。評価を下げる必要はないでしょう。今回の出走馬の中では最も強い競馬をしていたのは確かです。

 では、少し駆け足になりますが、先週の2歳戦の回顧を。

 中山ですが、新馬戦、未勝利戦からは特筆すべき馬が見当たりませんでした。東京でのデビューラッシュの谷間ということでしょうか。500万下では土曜の葉牡丹賞(芝2000m)。新馬戦を高評価したミステリアスライト(牡、父アグネスタキオン、母オウリエット、美浦・小島太)が、脚質に幅を見せて逃げ切り勝ち。63.2−60.0秒で、直線はどうやっても交わされない余裕の脚。かなり脚を長く使える馬です。初戦は出遅れから馬群を割り、今度は逃げ切り。自在味も見せて、これは順調なら重賞の1つ2つは取れる器です。

 2着マイネルチャールズ(牡、父ブライアンズタイム、母マイネプリテンダー、美浦・稲葉隆一)は、不利はありましたが使える脚が短い。3着ブラックエンブレム(牝、父ウォーエンブレム、母ヴァンドノワール、美浦・小島茂之)は阪神JFを除外されての出走でしたが、決め手は一番でした。来年が楽しみな牝馬。阪神JF組と遜色ありません。



 阪神では土曜7Rのマイルの新馬戦に尽きるでしょう。父Kingmamboで母ビリーヴ、屈指の良血馬ファリダット(牡、栗東・松元茂樹)と、ダイワメジャー、スカーレットを兄姉にもつ、今をときめくスカーレット一族のブーケフレグランス(牝、栗東・角居勝彦)の激突。3F36.3秒−5F61.4秒と、マイルにしては超スローだったので、時計は水準以下ですが、上がり34.0秒で瞬時にトップギアに入ったファリダットはさすがのバネでした。ただし、あのバネは明らかに2000が限界だと思うのですが…。幼さも見せており、精神面での上積みはかなりありそうです。



 距離延びて注目はブーケフレグランス。直線ではズブさをみせて、とても届かないかというシーンもありましたが、ラスト100mで2着まで押し上げました。ダンスインザダーク産駒らしい体型で、いかにも距離はもちそうですが、決め手不足で取りこぼしも多くなりそう。クラシックへ向けては、権利を取るのに苦労しそうな恐れがあります。杞憂に終わればいいのですが…。

 高レベルレースとなったのが千両賞。1分34秒0は翌日の阪神JFと0.2秒違うだけ。このタイムを逃げ切りで押し切ったロードバリオス(牡、父ブライアンズタイム、母レディブラッサム、栗東・藤原英昭)は、優秀なマイラーでしょう。叔父は京都2歳Sを先日制したアルカザン(牡、父ダンスインザダーク、母サラトガデュー、栗東・昆貢)。同年のライバルが叔父甥の関係となります。ただしロードは母父ストームキャットですから、距離はアルカザンほどもたないでしょう。



 2着エイブルベガ(牡、父アドマイヤベガ、母カネヤマシカダ、美浦・二ノ宮敬宇)も渋太いところを見せて、函館2歳Sの惨敗は馬場のせいと証明できましたが、注目は3着ダノンゴーゴー(牡、父Aldebaran、母Potrinner、栗東・橋口弘次郎)。前走を高評価しましたが、今回も負けてなお強し。距離もマイルがベストであることを証明したと思います。出遅れが響いただけです。ドリームローズ(牝、父サクラバクシンオー、母ビスクドール、栗東・池江泰寿)はここまで。ミゼリコルデ(牝、父Fasliyev、母Match Point、栗東・音無秀孝)は不利があったとはいえ、これも現状は頭打ちでしょう。見直せるのはデビュー戦を高評価した8着イイデシンゲン(牡、父ブライアンズタイム、母ミラーズミガ、栗東・昆貢)。今回は完全にボサッと走ってしまった感じで、マイルだと短いことが明白です。またプラス8kgで、新馬戦のあと一度緩めたのも明白。試金石は次走でしょう。

 2日の芝2000mの新馬戦を勝ったジュウクリュウシン(牡、母インデポジット、栗東・昆貢)は、4コーナーで挟まれかけましたが、慌てずに出し直されて危なげない勝利。時計はまずまずの水準級、次走が本当の試験となりそうです。マンハッタンカフェ産駒でヘイローの3×3、切れはありそうです。



 最後はポインセチア賞。初ダートのイイデケンシン(牡、父サンダーガルチ、母ヘヴンリーアドヴァイス、栗東・昆貢)が快勝。血統的にはやはりダートの短距離が稼ぎ所でしょう。納得の勝利でした。今後も息の長い走りを見せてくれそうです。しばらくは適鞍がないでしょうが…。



 12月の阪神は、毎年関西圏の大物集結開催。秋は東京でしたが、ここからは関西が大豊作。すべての2歳戦を要チェックです。

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