人の一生には山あり谷あり、どのくらいの不しあわせならよしとすべきか。何も彼もが意のままにと思えたことは、殆どない。だからと言って不幸だなんて考えるものではないし、突き詰めれば悲しくなるばかりだ。
わずかなりとも幸運を呼び寄せるには、これでいいのだという強い思い込み、これが大切だ。そして、良き事があっても、次にくる悪しきことを受け入れる心積をしておく、それがあってこそ生きていけるというもの。山あり谷ありを、あるがままに自分のものとすることができるかどうか、どうやら、その辺に極意が潜んでいるようだ。
オークスで何があったにせよ、その結末は結末。それが山であったものがいれば、逆に谷であったものがいて、どちらに転んだかは正に時の運。運を掴んだかどうかの問題だ。
どちらだったにせよ、いずれにも言い分が出て来るのがこの種の出来事、軍配があがったからには、それが運命と耳従うのが人の心意気というものだろう。いつまでも関わっていたのでは、良き風は吹いてこない。
どんなことでも御天道様だけはお見通し、あまねく裁定は下されるもの。天命は目に見えなくとも、宿命となってその身にふりかかってくる。そう言い聞かせ、福運を呼び込もうではないか。そう、ダービーで。
今ではあまり言わなくなったが、ダービーは特に運が大きく左右するものとみんなが思っていた時代があった。それは、出走頭数が多かったから尚更で、実際、フルゲート28頭の頃は、見るからに勝つのは幸運だった。
では、今はどうだろうか。今は、ここまで辿り着くのが幸運なことだと思っている。18頭と厳選された中にいること、これこそ、強さに加えて運がなければ達成されない。18頭のダービーダンディーズ、その瞬間に、強運を背負ったもの同志が戦う大一番、それが今のダービーだ。その日を高い山とするよう、大福招来を念じて立ち向かうつもりでいる。
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