ラストデーをVで飾ることはできなかったが、その表情には一点の曇りもなかった。橋口弘次郎調教師(70)=栗東=が最後の重賞舞台に送り出した
ミッキーラブソングはゴール前の大接戦の末に4着同着。「納得のいく騎乗をしてくれた。久しぶりに声が出たね。馬も頑張ってくれた」と人馬をねぎらった。
幸多き35年間だった。手掛けた名馬は
ダンスインザダーク、
ハーツクライ、
ワンアンドオンリーなど記憶に残る名馬ばかり。現役2位となる
JRA通算991勝(8645戦、うちGI10勝を含む重賞96勝)を挙げた名伯楽は、「今朝起きたときには気持ちがそわそわした。終わりをひしひしと感じたね。でも、最高の調教師人生だった。競馬人生に悔いなしだよ」と満足げに言い切った。
最終レース後は小牧、
武豊、岩田らが次々と駆けつけて感謝の言葉を紡いだ。場内からは“橋口コール”が巻き起こり、ファンからは抱え切れないほどの花束を受け取った。厩舎は息子の慎介調教師が引き継ぐ。「これからも、いちファンとして競馬を楽しみたいね」。誰からも慕われ、敬われた指揮官は静かに競馬場を後にした。
提供:デイリースポーツ