嘉藤貴行騎手とのコンビで昨年の
日本ダービーで5着と健闘した
コメート(牡4)が、左前肢屈腱炎のために3月17日付けで競走馬登録を抹消された。同馬は既に北海道日高町のサンシャイン牧場に到着しており、今後は種牡馬としてオーナー所有の繁殖牝馬に配合される予定となっている。
同馬を管理していた
土田稔調教師は
「昨年秋は体調が整わず、休養していました。疲れもあったのでしょうね。福島のオープン特別を目標に速めの調教をしていたのですが、脚元の不安が出て
エコー検査をしたら左前脚の屈腱炎という診断でした。オーナーがご自分の所有している繁殖に種付けをしたいということで、種牡馬入りが決まりました」と引退の経緯を説明した。
さらに「少しずつ大人になっていて落ち着いてはきていましたが、元々立ち上がったりと元気は良い馬ですから。僕にとって初めて牡馬クラシックに出た馬なので、これから楽しみにしていました。できれば復帰させたかったのですけど…。応援して下さっているファンの方にも申し訳なく思いますし、厩舎としても正直痛手ではありますね」と無念さを滲ませたが
「
コメートの子供でまた頑張りたいという気持ちもありますし、産駒には走ってほしいですね」と、未来に向けて期待を込めた。
「これからまたいろいろな夢を見られるかなと考えていた矢先だったので…」主戦の
嘉藤貴行騎手も、残念な思いを口にした。
だが、ここで夢が終わったわけではない。
「この馬にはとてもお世話になりましたし、志半ばではありましたけど、無事に引退できたのは不幸中の幸いだったと思います。美浦近郊の牧場で、北海道に旅立つ前に
コメートの顔を触ることができたのは良かったです。オーナーも諦めきれない思いがあったのでしょうし、種牡馬になることができて、本当に幸せな馬です。僕がジョッキーをやっていく中で、
コメートの産駒に乗るという新しい目標、夢ができました。僕が乗っていた馬で種馬になるなんてなかなかないですし、北海道に行ったら、牧場に会いに行くつもりです」
クラシック戦線を力を合わせてともに戦った相棒への感謝の気持ちと、将来への希望を語った後の嘉藤騎手は、いつも通りの笑顔に戻った。
オーナーや関係者、そしてファンの夢を乗せ、近い将来
コメートの子供たちが競馬場を疾走する日を心待ちにしたい。
(取材・文:佐々木祥恵)