「
安田記念・G1」(5日、東京)
“穴の田辺”がまたやった。果敢にハナを奪った8番人気の
ロゴタイプが、まんまと逃げ切り。13年
皐月賞以来、3年2カ月ぶりのVを飾るとともに、G1・3勝目を決めた。G15連勝を狙った1番人気の
モーリスは道中で行きたがり、本来の末脚を発揮できず2着。6番人気
フィエロが3着、2番人気の
リアルスティールは11着に大敗した。
検量室前に引き揚げてきた
ロゴタイプを迎えて、
田中剛師の上気した声が響く。「やったね!」。これだから競馬はやめられない。前夜の雨で緩んだ馬場も味方に、あれよあれよの逃げ切り勝ち。3年2カ月の長いトンネルを抜けて、
皐月賞馬がまんまの独り旅で連敗を「16」で止め、絶対王者
モーリスの連勝を止めてみせた。
「競ってくる馬もいなかったので逃げた。プレッシャーもなく、単走の追い切りみたいに走っていた」と策士・田辺はしてやったりの表情だ。2走前に初めてコンビを組んだ時から試したい作戦だったという。前走の
ダービー卿CT(2着)ではあえて我慢し、大一番で封印を解いた“勝負手”。直線は馬場のいい外へ持ち出す他馬を尻目にただ1頭内ラチ沿いを駆け抜けた。
「中途半端はやめようと最短距離のインコースへ行った。坂を上がったところで差が詰まっていなかったので、イケるかなと思った」と世界レベルの強豪を打ち負かした会心の騎乗を振り返った。
看板馬の復活を信じてきた
田中剛師も安どの口ぶり。「馬はずっと頑張っているのに、周りから終わっちゃったの?と言われるので」と、G1馬を管理するならではの苦しみがあったようだ。
週中は「逃げようかな」と思案顔で話していたが、田辺とは「細かく説明しなくても、同じ気持ちで一致していた」。2番手で必死に手綱を絞る断然人気馬の姿に「引っ張ってこらえていた。思った通り。直線は机を蹴飛ばした」と、大興奮で迎えたゴールの瞬間を明かした。
3つ目のG1タイトルを手にし、今後のローテは見直されることになりそうだ。「勝てると思っていなかったので、(次はG3の)
中京記念と思っていた。また考え直す」とトレーナー。“人気薄の逃げ馬”という基本のキで、5週続いた春の東京G1シリーズを締めくくった。
提供:デイリースポーツ