「
凱旋門賞・仏G1」(2日、
シャンティイ)
想像だにしない惨敗劇だった。海外馬券発売第1弾となった今回、日本から唯一参戦し、国内のオッズで単勝1番人気に推されていた
マカヒキだったが、直線で失速し14着に終わった。勝ったのは3番人気の愛国馬
ファウンド。9番人気の
ハイランドリールが2着、8番人気の
オーダーオブセントジョージが3着に入り、上位3頭はいずれもA・オブライエン厩舎で独占となった。
マカヒキと人気を分け合った英国の
ポストポンドは5着に敗れている。
世界の壁は高く、そして険しかった。日本の期待を一身に背負って挑んだ
マカヒキだったが、その悲願が実ることはなかった。ともに覇権を競ったラ
イバルたちは、はるか前方にいた。
父ディープインパクト(06年3位入線後失格)と描いた親子2代の夢。その希望の光には、遠く手が届かなかった。
レースは好スタートを決めて、6番手集団の外を追走。目の前には一番の強敵
ポストポンドがいる。迎えた最後の直線。必死にルメールが追うが、全く伸びない。大きく離された14着の惨敗。1着の
ファウンドがゴールを駆け抜けた姿を後方からながめるしかなかった。
「残念でした。いつもは彼は
リラックスしているが、きょうは引っ掛かってしまった。いいスタートを切ったけど、すぐにオーバーペースになって、行きたがった」とルメールは唇をかむ。2分23秒61のレコードが飛び出すほどのハイペースを追い掛けてしまう形になり、直線を迎えた時には余力は残っていなかった。
自身9度目の参戦となったルメールは、これまでと違う思いで臨んでいた。母国・フランスで築いた地位を捨て、昨春、JRAジョッキーに転身。信頼し合い、全員が一丸で勝利を目指す日本の競馬に憧れ、海を渡った。「(オーナーの)金子さん、友道先生、みんながチームでいいリレイション(関係)」。最高の団結力で挑んだ自負はあった。ただ、結果は伴わなかった。
チームをまとめた友道師も気持ちは同じだ。フランスの
小林智厩舎を拠点に、
シャンティイで働いた経験を持つ大江助手、調教を手伝った息子の友道優一さん、矢野装蹄師ら、信頼できるスタッフと万全の態勢で臨んだ。「これで負けたら仕方がない。勝った馬が強かったということ。やれることは全てやった」。結果は完敗。悔しくないと言えば、うそになる。ただ、この言葉に偽りはなかった。
3歳馬の
マカヒキにとって、これが最後の挑戦ではない。「決めるのはオーナーですが、僕自身は来年も
凱旋門賞に来たいと思っています」。戦前、そう口にした指揮官が、一度の惨敗で諦めるはずはない。まだ、人馬ともに成長過程。チームで共有した夢も、いまだ道半ばだ。さらに力を蓄え、今度こそ重く、固く閉ざされた歴史の扉を開いてみせる。
提供:デイリースポーツ