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エイシンヒカリに騎乗予定の
武豊騎手――春競馬を振り返ってください。
武豊 年末の香港から春はフランス、イギリスのヨーロッパ遠征でした。フランスでは本当にいい競馬でこの馬の強さを世界の人に見てもらいました。
――海外での収穫は?
武豊 もともと能力の高い馬だと思っていましたが、この馬の本来のパフォーマンスを出せたことですね。
――さて、先週の追い切りはいかがでしたか?
武豊 久しぶりに乗せてもらいました。前半、予定していたより速くなってしまい折り合いを欠いてしまったんですけど。その分、ラストがかかってしまいました。でも、強い調教をしたかったのででそういう意味ではいい調教ができたかな、と思います。
――今週の追い切りは?
武豊 折り合いをつけたいな、というのが僕自身ありました。でも、あまり軽くなり過ぎないようにと言われていました。いい調教ができたと思います。
――スタンド前から入っていって気持ちよさそうに走っていましたね。
武豊 そうですね。今日は前半、ほんとにゆっくり走ってくれました。ラストの伸びもよかったです。難しい馬ですが、今日はうまくいきました。状態はいいと思います。
――昨年は
毎日王冠を勝って天皇賞に臨みました。今年の臨戦過程をどう思いますか?
武豊 昨年、
毎日王冠ではいいレースが出来たんですけど。天皇賞では
テンションが上がってしまって、入れ込みがきつかったですね。それもあってかレースでもまったくいいところを出せませんでした。おそらく、それをふまえてだと思うんですけど。先生の考えで今年の秋は天皇賞から、と聞いていました。しっかり体調は整えられていると思います。
――天皇賞からぶっつけ本番というのは?
武豊 むしろいいと思います。中2週を嫌って前哨戦を使わないようですね。休み明けでも走れる馬ですし、結果も出ていますからね。
――東京2000mというのは?
武豊 距離は2000mで結果を出していますし、まったく問題ないですけど。東京というか、
天皇賞(秋)というのは逃げ切るのは難しいレースなので。そういう意味では逃げるかたちをとっているこの馬にとっては決して楽なレースではないと思いますが。この馬の力を出せれば、それも克服できると思います。
――この馬にとって理想的なレースは?
武豊 どうでしょうね(笑)。ほんと難しい(馬)ですからね。決して絶対逃げなきゃダメ、という馬ではないんですが。フランスで勝ったときも二番手からの競馬でしたし。ただ、道中いかに馬が気分よく走れるか。ただ、それだけなんですよ。そのためには先手をとったほうがそういうかたちに持ち込みやすいというのはありますけど、ほかの馬の出方もありますから。
――以前と比較すると、コース形状は改善されましたが?
武豊 それでもスタートしてすぐにコーナーなので、いいポジションを取りたいという意識が強くなりますからどうしてペースが速くなってしまうんです。
――そういった意味でも枠は気になりますか?
武豊 そうですね。外はやはりロスがあると思います。
――この1年でどのあたりに成長を感じますか?
武豊 あんまり変わっていないですね(笑)。そうですね、先週乗ったとき『どうかな?』と思いながら乗ったんですけど、『相変わらずだな』というのが正直なところです。難しいです、この馬は。
――年内引退決まっています。国内最後のレースになりますね。
武豊 はい。
天皇賞(秋)のあと、
香港カップで引退というのは聞いています。日本で走るのはラストになります。海外ではGIをふたつ勝っていますけれども、日本でまだ勝っていない。本当にラストチャンスですので、もちろん勝ちたいというのはありますけども、この馬の強さを日本のファンに見てもらいたいという気持ちが強いです。
――
武豊騎手自身も天皇賞の春秋連覇がかかっています。
武豊 そうですね。これだけの馬に乗って出れるわけですから、当然狙っていますし楽しみですね。
――最後にひとこと。
武豊 世界レベルのこの馬と一生懸命に戦います。
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エイシンヒカリを管理する坂口正則調教師
――
香港C、イスパーン賞とGI連勝、素晴らしい成績でした。
坂口 香港とフランスは順調にいったんですけども、イギリスでは成績がよくなかったんですけども。向こうの競馬が合うんでしょうね。5歳になって馬体が少し大きくなるなど、馬がよくなっていますね。筋肉も増えています。
――年内に引退でしょうか?
坂口 はい。
天皇賞・秋と
香港カップの予定です。
――海外遠征後はいかがでしたか?
坂口 イギリスから帰って牧場で休養したあと、2か月前に入厩しています。馬はすごく順調にきています。状態はいいと思います。
――10月6日から坂路でも速い時計を出していますね。
坂口 やれば出る馬ですからね。先週も速すぎるくらいの時計を出していましたから。
――今週の追い切りはいかがでしたか?
坂口 豊ジョッキーに幾分テンをセーブしてほしいと言いました。終いだけ伸ばす程度でしたが、動きはすごくよかったですね。折り合いがつきにくい馬なんですが、今日はついていましたね。いい調教が出来たと思いますよ。
――
ジャッジは?
坂口 馬の出来は最高です。
――昨年は
毎日王冠からのスタートでしたが、今年はこの天皇賞からのスタートとなります。
坂口 この馬は詰めて使うとだめですね。間隔をあけたほうが成績がいいです。
――休み明けですがレース勘は?
坂口 この馬は全然問題ないです。かえって間隔があいたほうがいいですから。
――楽しみですね。
坂口 はい、メンバーも強いですがね。
――左回りは?
坂口 コースは問題ないですが、東京の芝2000となるとね。マイペースでどこまで逃げられるか、じゃないですか?
――前に行って、ということですか?
坂口 それしかないでしょう。“逃げて”の馬ですから。逃げるしかないです。
――国内ラストランになりますね。
坂口 日本でGI勝ちはありませんのでね。
天皇賞(秋)も苦しいと思いますけども、なんとか国内でGIをとりたいですね。
(取材・写真:花岡貴子)