毎日のようにトレセンへ顔を出し、淡々と調教をこなしていく。派手さはなくとも地道に勝ち星を積み重ね、武士沢友治騎手(39)=美浦・フリー=は節目の通算300勝まであと“1”だ。
「少ないと思いますよ。もう20年やっているから」と受け答えは謙虚だが、節々から強い信念が伝わる。「勝利数だけが欲しくてやっているわけじゃない。自分を見失わないようにやってきた。馬に乗りたくて入った世界だから」。職種にかかわらず、多くの人間が数字に振り回される世の中。我々もしかり。胸に突き刺さる言葉でもある。
大阪杯に参戦する
マルターズアポジーは前走の
小倉大賞典をV。くしくも、当時の勝利が299勝目だ。あれから1カ月半。「足踏みしているけど、気にしていない。でも、G1はやっぱり特別。厩舎のみんなで力を合わせて仕事をしているから。喜ぶ顔を見たい」。チームの一員として真っすぐな姿勢で取り組む職人に、勝利の女神は最高の贈り物を届けるかもしれない。(デイリースポーツ・豊島俊介)
提供:デイリースポーツ