今年の
皐月賞は当初「賞金1400万円前後が出走確定ラインになる」といわれていた。重賞レースの勝ち馬がころころ変わるからこそ「混戦」と呼ばれるわけで、出走への
ボーダーラインは自然と高くなる。結果的には賞金1200万円の
キングズラッシュも出走可能となったが、優先権のない本賞金400万の1勝馬が出走できた2014、16年に比べれば、やはり「混戦」の名にふさわしい
ボーダーラインと言えようか。
そのハードルの高さを各キュウ舎は常々、意識していたのだろう。
プラチナヴォイスを担当する“ヘルパー”の織川さんは、直線でモタれて3着に敗れた前走の
スプリングSを「まともに追えずに3着に負けたのが悔しいというよりは、何とか3着で
皐月賞の優先(出走)権を取れたことがうれしい」と振り返る。
抜群の手応えで直線で一旦は先頭に躍り出ながらも、2走前の
きさらぎ賞(4着)と同じように内にモタれ、まともに追えずに差し込まれてしまった競馬ぶりは実にもどかしく映るが…。賞金1200万円と微妙な立場にあったことを考えれば、0秒1差で
サトノアレス(4着)を退け、本番への優先権を確保できたことは“先につながった”と前向きに捉えることができるのだろう。
「この中間は片側だけ前走より深いブリンカーを着けて調整してきた。効果のほどはまだわからないけど、馬は相変わらず元気よさそう。とにかく、ここ2走は力を出し切れた感覚がないのは確か。(直線に向いた時に)目標が前にいた方がいいのかもしれないね」とは主戦の和田。
なんでも以前より極端にモタれるようになってきた“悪癖”は、
父エンパイアメーカー特有のもので、「いろいろ馬具を着けたり、替えたりして工夫しても、やる時はやってしまうだろうし…。さすがに今回は大丈夫とか、軽々しくは言えないよ」とジョッキーのトーンは微妙なままだが…。
「今度は先行勢のなかに強い馬もいるし、頭数が多くなって、接戦になった方が、僕の馬にはいいかもしれないね」というセリフは“今年の混戦模様なら”という期待感を十分に抱かせてくれるものだ。
勝負どころの、あの抜群の手応えからすれば、まともに追えていたら、この
プラチナヴォイスこそが
スプリングSを快勝していたとみている坂路野郎は、要注意の一頭として、直前まで密着マークを続けていこうと思っている。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ