3戦3勝の牝馬
ファンディーナが閉ざされた69年の扉を開けんと
皐月賞出走を決めたのは、いくつかの理由があろう。ただ、そのひとつに相手関係という
ファクターが潜んでいることは誰しも容易に想像がつく。
下馬評で「主役不在」とされる今年の牡馬戦線。牝馬のチャレンジは往々にしてその間隙を突くものであるのも事実だ。ただ本当に「不在」なのだろうか、とも思う。2011年
オルフェーヴル(4番人気)しかり、15年
ドゥラメンテ(3番人気)しかり。終わってみれば「1強」という
皐月賞も過去何度もあった。混戦というよりは「難解」。実はそれが今年の牡馬戦線の正体かもしれない。
もっとも「難解」であることの原因は明快だ。牡馬唯一の無敗馬
レイデオロを筆頭に、GIII
共同通信杯(
スワーヴリチャード)、GIII
きさらぎ賞(
アメリカズカップ)など主要重賞優勝馬が軒並み
トライアルを
スキップ。強さの尺度が判然としないまま頂上決戦を迎えるためだ。その事態が多くのファンを、当方を含む記者連中を悩ませているのだ。
週明け(11日)の美浦で、
アウトライアーズの
小島茂之調教師がつぶやいた。
「ちょっと落ち着きすぎているのが嫌な感じ。折り合いという意味ではいいかもしれないが、気が入っていない不安もある。成長期の中で体形が変わって、走りづらくなっているのかもしれない」
サラブレッドとしてはまだ完成途上の3歳春。クラシックはある意味で、その成長が如実に示される舞台だ。いうなれば、
トライアルパス組はそれが不明。ならば成長が明白な馬にかけてみるのも手だろうか。
「すごいですよ。どんどん良くなる。これが
ステイゴールドの血なんですかね。全姉
ウインファビラスは2歳からほとんど変わらなかったけど、牡馬と牝馬でこれだけ違うものなのか」
先週の美浦でこう語ったのは
ウインブライトを送り出す菅田健太助手。昨秋の復帰後は4戦3勝2着1回。いま、目に見えて馬が変わってきている一頭だ。「実戦、休養、調教の
ステップを繰り返してこそ、馬は強く成長する」とかつて語ったのはダービー2勝の松田国英調教師。その過程を着実に踏んできた
ウインブライト、当方にとっては非常に興味深い一頭である。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ