「
皐月賞・G1」(16日、中山)
単勝9番人気の伏兵
アルアインが混戦の牡馬クラシック第1冠を奪取した。神戸市出身でデビュー9年目の
松山弘平騎手(27)=栗東・フリー=は悲願の中央G1初勝利。2着は
ペルシアンナイトで池江厩舎のワンツーとなった。12番人気
ダンビュライトが3着で3連単は106万円超の波乱決着に。1番人気に支持された牝馬
ファンディーナは7着に敗れ、4戦目にして初黒星を喫した。
人気馬も無敗馬もねじ伏せた。冷静な鞍上の手綱さばきに導かれ、
アルアインが大混戦のクラシック第1弾を制した。
目の前には1番人気の牝馬がいる。「
ファンディーナを見ながら競馬ができればと思っていた」。松山は狙った通りのポジションを取った。勝負どころからはペースが急加速。それでも主戦は慌てなかった。馬場に脚を取られ手応えが悪くなっても、相棒を信頼した。
直線は標的にした牝馬の内へ。「無我夢中だった」。同厩舎のラ
イバルを差し切り、中央G1のゴール板を初めて先頭で駆け抜けた。昨年の
スプリンターズS(
ミッキーアイル)での頭差惜敗など、2着を3度味わった大舞台。交流G1での勝利(
コーリンベリーでの15年JBCス
プリント)はあるが、デビュー9年目、38戦目でようやく手にした中央G1の勲章だった。
「“ついにやったよ”と伝えたかった」。涙を腕で拭い、こぶしを何度も天に突き上げて空を見上げる。亡き祖父への報告だった。「ジョッキーになったきっかけが祖父。競馬場も連れて行ってくれたし、いつも一緒で。祖父に育ててもらったような、おじいちゃん子でした。病院で“僕がジョッキーになるまで死んじゃダメだよ”って泣いたのを覚えています」。その祖父は、松山が小学6年生の時に他界。「おじいちゃんの夢だったので。天国で喜んでくれたと思う」。G1ジョッキーになる。心に決めた約束を果たした。
池江師も「絶好のポジションで流れに乗れた」と好騎乗をたたえる。
オルフェーヴル以来2勝目となる
皐月賞制覇に「長くかかったという感じ」と笑みを浮かべた。次は距離がさらに延びるダービーへ。「対応できるように調教でしっかりつくる」。トレーナーが気を引き締めれば、主戦も「折り合うし、心配していない」と力を込めた。2戦2勝の名コンビが、次はホースマン最大の夢に挑む。
提供:デイリースポーツ