今、最もノッている若手ジョッキーと言っていいだろう。関西のホープ・
荻野極(19)=栗東・
清水久詞厩舎=だ。デビューした昨年は初騎乗からの10カ月で20勝を挙げたが、今年はその半分の5カ月で19勝(30日終了時点)。騎乗数も増え、関係者からも信頼を得ている。
どんな目標を持って2年目を迎えたのだろうか。「具体的な数字はありません。ただ、昨年は取りこぼすことが多かった。それをなくすことがまず勝率を上げることにつながると思っています。いい馬に乗せてもらっているのも、馬主さんや厩舎の方々のサポートのおかげ。今の結果には満足していません」と
荻野極は話す。
競馬ファンを驚かせたのが、4月23日の東京競馬場。自身初めての東京コース参戦だったが、東西のベテランG1ジョッキーたちを相手に、5Rは9番人気の伏兵を、10Rは自厩舎の2番人気馬を、勝利へと導いた。「関東のジョッキーよりもコースの特徴はわかっていませんし、できることをやろう、と。早朝からコースを歩いて芝の状態を把握しました。2000メートルのスタート地点はテレビで見るのと全然違いましたね。そのなかで、結果がついてきたのでよかった」とホッとした表情で振り返る。
実は、福島と京都も初勝利はコース初騎乗の日。「改めて下準備を怠ってはいけないと思いました。足もとにある小さなことから気を付けないと結果は出ないんだ、と」。経験に勝るものは準備や努力ということだろう。
レース後の検量室では、先輩ジョッキーにアド
バイスを求めることに努めている。「向上心を持って何でも吸収したいと思っています」と目を輝かせる。
今年から創設された、
地方競馬とJRAの若手ジョッキーが争う『ヤングジョッキーズシリーズ』。
トライアルラウンドの第1戦目となった
高知競馬場で1着と5着。40ポイントを獲得して暫定首位に立った。「高知も初めてで手探りなので、赤岡(修次)さんにいろいろと聞きました。そのおかげです」。赤岡ジョッキーといえば、06年から9年連続でリーディングに輝いた高知の名手。中央に限らず、地方でも、先輩から何かを盗もうとする意欲や熱意こそ、
荻野極のいいところである。
もちろん、狙うのは『ヤングジョッキーズシリーズ』の優勝。「地方のジョッキーは“追える”と言われますからね。ガッツと体力で負けないようにしたい」と力を込める。
自厩舎の
清水久詞厩舎の看板馬といえば、
キタサンブラックだ。彼もその背にまたがることがある。「いい馬の背中を知ることができるのは幸せなこと」。いつか名馬といわれる馬の背中に乗り大レースを勝つことを夢見る。中学生のころに、空手の“型”で世界大会に出場。4位の実力を持つ
荻野極。その考え方や、勝負師らしい眼力の強さは、とても19歳とは思えない。これからどんな進化を遂げるのか、楽しみにしたい。(デイリースポーツ・井上達也)
提供:デイリースポーツ