オープン馬、しかも自分の取材担当厩舎とあれば、その動向に気を配るのは記者の習性といっていい。
皐月賞で本命にした
ウインブライト(8着)の様子が気になり、菅田健太助手に声を掛けたのはレース3週間後のこと。1分57秒8のレースレコード決着にあって、終始外を回る大味な競馬をしたのが同馬。8着ながら0秒5差に踏みとどまった走りは、地力強化を示すものと受け取っていた。
「確かにきつい競馬でした。頑張りましたよね。ただ、それだけに…。今は内緒にしておいてほしいんですが、実は蓄積した疲れが過去のレースの比ではないんです。今後の回復がダービーの焦点かもしれません」
語った菅田クンが見せた渋い表情が、抱えた反動の大きさを当時は雄弁に伝えていた。事実、タフな戦いだったろう。1番人気7着の
ファンディーナは疲れが抜けず
オークス回避、14着
コマノインパルスは繋靱帯炎で放牧へ。
NHKマイルCへの転戦組も8、11、13着と見せ場さえつくれなかった。
「正直、ダメージはありましたよ。ただし、それが大きな不利とも思えないのは、きっとウチの馬に限ったことではないだろうから。能力が高い馬同士がレコードが出るような硬い馬場で走れば、レースが過酷になるのは当たり前。それなりの負担を抱えるのは、各陣営、同じだと思うんです」
立て直しに奏功した安堵からか、1週前にこう語ったのは管理する
畠山吉宏調教師。おそらく師の言葉は的を射ている。高速決着後の第2冠は極端な結果になりやすい。2004年の1着
ダイワメジャー、2着
コスモバルクはダービーで6、8着、09年
アンライバルド、
トライアンフマーチは同12、14着と大きく崩れた。逆に13年
ロゴタイプ、
エピファネイアは5、2着、15年
ドゥラメンテ、
リアルスティールは1、4着、昨年
ディーマジェスティ、
マカヒキは3、1着と相応の力を示した。おそらく世代で抜けた地力があれば多少の疲れはカバーできるし、そうでなければ立場を危うくする。ならば今年は再び横一線の戦いかもしれない。
一方で反動の懸念は
トライアル組にも存在する。
青葉賞が2分23秒6、
プリンシパルSが1分58秒3と、揃ってレースレコード決着。各陣営が自らとの闘いを余儀なくされているのだ。その意味では第1冠&
トライアルをパスした
サトノアーサーのローテが案外、大正解という可能性もあるのだが…。各馬の中間の調整過程と最終追い切りをじっくり吟味して、頂上決戦の答えを出したい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ