7月1日から夏のローカル戦が本格的に開幕した。リーディング上位騎手が3場に分散し、若手にとっても騎乗機会が増えるシーズン。例年、この夏場を飛躍のきっかけとするジョッキーも少なくない。
個人的に今年の注目株は、3年目に突入している
野中悠太郎騎手(20)=美浦・根本=。1年目は4勝にとどまり、決して派手なデビュー年とはならなかった。2年目も春競馬が終了時点で2勝止まり。リズムに乗れない状況のなか、大幅に
ステップアップを遂げたのが昨夏だ。福島、新潟で7勝の荒稼ぎ。当人にとってもターニングポイントとなったに違いない。競馬ファンの間で「藤田菜七子の兄弟子」というイメージから、「穴をあける若手」に変貌を遂げたのも、この頃だったのではないだろうか。
「去年は福島の1週目で2勝と好スタートを切れたんです。でもケガで2、3週目は乗れなくて。悔しい思いをしましたね」と反省の弁から入るあたりは、上を目指す志が根付いている証拠かもしれない。とはいえ、自信が芽生える貴重なシーズンになったのも事実。「特別を勝ったのは大きかったですね(7月31日=
岩室温泉特別)。減量の恩恵がないなかでの勝利ですから。平場の勝利とはまた違います」。今年もコンスタントに勝利を積み上げ、春競馬が終了時点で6勝。昨年比では3倍の数字をマークしている。
6月17日にはフランス・
シャンティイ競馬場での騎乗も実現。
JRA代表として臨んだ競馬の若手騎手招待レース、フューチャー・レーシング・スター賞で2着に入っている。異国の競馬文化に触れ、またひとつ引き出しが増えたようだ。「レース週の火曜朝から毎日、調教にも乗せてもらいました。どちらがいいとかではなく、日本とは違いがありますよね。装鞍の時も馬がすごくおとなしいんです。馬自身が納得しているというのかな。あとは人間が馬に対してたくさんしゃべりかけているシーンは、すごく印象的でした」。レース結果の2着に対しては「悔しくて表彰式でも笑えなかった」と唇をかむが、この経験は必ずしや飛躍を手助けしてくれることだろう。
ちなみに最近、周囲によく言われることは「顔が将棋の藤井四段に似ている」。先輩の
田辺裕信騎手には“将棋の駒を持ち歩け”とからかわれているらしい。「今年の夏は去年より馬の質も上がってくるんじゃないかと思います。夏場の目標は10勝。若手の減量特典を3キロから2キロにしたいですね」と語った野中騎手。夏競馬の開幕前で
JRA通算勝利数は21勝。31勝からは2キロ減での騎乗となる。藤井四段の連勝は“30”の手前でストップしたが、こちらが目指すは着実な積み重ねで通算30勝。そして目標と掲げた31勝へ到達を期待し、いつの日か「競馬界の藤井四段」と言われるような大物へと育ってほしい。(デイリースポーツ・豊島俊介)
提供:デイリースポーツ