夏競馬は基本的にコース巧者を徹底して狙うのが得策だ。例えば先週開幕した福島開催。
南相馬特別(芝2000メートル)を3馬身半差で完勝した
ヒメタチバナは、それまで当舞台を4走して(0・3・1・0)と堅実だったし、日曜12Rの500万下(ダート1150メートル)を制した
タイセイラルーナも1000万5着を含め(1・0・2・1)と当コースを得意にしていた。むろん、9番人気で
ラジオNIKKEI賞(芝1800メートル)を3着した
ロードリベラル(
きんもくせい特別で2歳500万勝ち)も同じことが言える。
さて、その意味で当初懐疑的な見方をしたのが、
ベストマッチョのGIII
プロキオンS参戦である。同馬はこれまでデビューから9戦がすべて東京コース。井の中の蛙と言っては失礼かもしれないが、大海知らずのお坊ちゃま的な側面があるのは否定できない。中京コースも初めてなら、輸送競馬も初めて。夏競馬の
セオリーに則せば“消し”が正着という思いがあったのだが…。
「え!? 同じGIIIの
根岸Sと比べたら、どう見ても条件は好転しているとオレは思うんだけどな」
これは管理する
手塚貴久調教師にその疑問をぶつけて返ってきた言葉。2番人気に支持された
根岸Sは12着に完敗し、重賞の壁を味わったが、今度は違うと言わんばかりの口ぶりである。
「だってそうだろ? 当時は休み明けでキャリアも5戦、重賞も初挑戦だった。今回は経験を積んでの叩き3走目。チーク(ピーシーズ)やメンコを外して敏感にさせたほうが走ることが前走(
麦秋S=1着)で分かったし、何より先行力が生きる中京がこの馬の脚質に
フィットするんじゃないかと期待しているんだ」
指揮官にそう言われてハッとした。確かに同馬の最大の武器は持続性あるスピード。これまで東京で結果を出してきたが、タイプ的には直線の長いコースより小回り向きである。過去4勝を挙げる左回りの千四、舞台が替わればさらにパフォーマンスを上げる可能性は確かにある。
「輸送は大丈夫かって? おいおい、これまで天栄と美浦を何往復したと思っているんだよ。全然問題ないし、接着装蹄の仕方を変えた前走から馬も随分と良くなってきたんだ」と手応えを語ったのは担当の滝口政司厩務員。先週の
ラジオNIKKEI賞を制した厩舎の勢いからも、“隠れ中京巧者”だったというオチを警戒したい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ