枠順からしてどんな展開になるのか予想するのが難しかったが、ダッシュよく飛び出した
コーリンベリーがハナを獲り、内枠ゆえ包まれたくないと考えたのだろう
ニシケンモノノフも気合を入れて行ったが、外の
ネロも速く、
ニシケンモノノフは3番手。
コパノリッキーはダッシュがつかなかったが、それはある程度予想されていたこと。スタート後の展開は想定内といえるものだった。
人気を確認しておくと、
コパノリッキーの1番人気は意外だった。人気が拮抗していたとはいえ、馬連や3連複では人気の中心が
ニシケンモノノフで、馬単、3連単では
コパノリッキーが中心となっていた。
コパノリッキーのスタートは、おそらく2000m戦であれば互角か、やや遅いという程度だっただろうが、さすがにこの距離では完全に置かれる形になった。それでも400mを過ぎた3コーナー手前あたりから、まくるように位置取りを上げていった。
最初の3F目までのラップを見ると、12.3-10.8-11.5というもの。
コパノリッキーが位置取りを上げていったのはちょうど3F目あたり。先頭から6馬身ほどもあった差を一気に詰めてきているから、おそらく
コパノリッキーは3F目にも10秒台のラップを続けていることになる。芝にしろ、ダートにしろ、1200m戦の中間手前で仕掛けていくというのはあまり見たことがない。そこで脚を使ってしまえば、直線までもたないと考えるのが普通だろう。しかし
コパノリッキーは違った。残り50mあたりで先頭に立ち、一旦は勝ったかに思えた。それを内から差し切ったのが
ニシケンモノノフだった。
16頭立ての10番枠に入った
コパノリッキーにとって、スタートでダッシュがつかないのはむしろよかったのではなかったか。互角のスタートを切って行き脚がついてしまえば包まれてしまい、外に持ち出せなかった可能性がある。馬群から取り残されたことで、むしろ難なく外に出すことができた。
初騎乗だった
森泰斗騎手は、馬にとっても経験がない1200m戦、1分ちょっとというわずかの時間で、様々な難しい判断があったと思われる。レース後はさすがに厳しい表情で、「あそこで上がっていったのが正解だったのかどうか、わかりません」と話していた。
果たして、それがよかったのかどうか。中団よりうしろでじっとしていて勝とうと思えば、たとえば3着の
ブルドッグボス、5着の
キタサンミカヅキが、ともにメンバー中最速の36秒2という上りを記録しているのだが、それ以上の脚を使わなければならない。経験のない短距離戦で終いにその脚を使うのはまず無理だろう。結果、アタマ差で惜しくも2着。JBCの2階級制覇と、GI/JpnIの3階級制覇にアタマ差届かなかった
コパノリッキー。クラシックではなくス
プリントへの挑戦は、負けたからには成功だったとはいえないが、間違ってはいなかった。
勝った
ニシケンモノノフは、
横山典弘騎手の好判断、好騎乗が光った。直線を向いて、
ネロと
コパノリッキーの間を突こうとしたが、
コパノリッキーの勢いがよくその間には進路ができず。おそらく馬場が重い内には行きたくなかったのだろう。
横山騎手は残り200mのあたりで外を見たが、
ブルドッグボス、さらにそのうしろから
キタサンミカヅキも伸びてきていて外にも進路はない。選択肢として残されたのは内。幸いにも最内の
コーリンベリーが下がりはじめていたので、
ネロの内に進路ができた。果たして馬場が重いと言われる内でも、伸びきる余力が十分にあったということ。直線で行き場をなくしそうになり、外か、内かという判断から抜け出したということでは、着差以上に強い競馬だった。
3着の
ブルドッグボス、4着の
ネロまでタイム差なし、そして5着の
キタサンミカヅキがコンマ1秒差というきわどい決着。直線を向いて一旦は先頭に立った
ネロ、4コーナー中団から追い込んだ
ブルドッグボス、
キタサンミカヅキも素晴らしいレースをしたが、今回は、横山騎手の瞬時の判断による好騎乗と、
コパノリッキーの短距離戦でも最後まで脚を使えるスタミナに尽きる。
多頭数の大井1200mは、やはり枠順がかなり勝負の鍵をにぎる。それはどの枠が有利でどの枠が不利という単純なものではなく、馬の脚質による。
内枠に入った逃げ馬はスタートさえ決まればかなりのアドバンテージがあるが、逆に外からハナをとるにはかなり脚を使ってしまう。それが今回の
コーリンベリー。内枠に入ってあのダッシュ力ならもっと楽に逃げられたはずで、今回は
ニシケンモノノフを制してハナを取るのに脚を使ってしまった。
対して控えるタイプの馬は、包まれることがない外枠が有利。ただ今回の
コパノリッキーは、よほど内のほうの枠でなければ、あれだけ他馬から置かれてしまえば、結果的に真ん中あたりの枠でもあまり関係がなかった。
チャンピオンズCでは3度とも惨敗している
コパノリッキーだが、もしかすると今回の経験は厳しい展開になりやすい
チャンピオンズCに生きてくるかもしれない。ただし、やはり内枠には入らないほうがいい。