今週で今年の東京競馬場での競馬開催も終わります。競馬博物館で行われている秋季企画展「前略
ディープインパクト様 関係者からDEEPへの手紙」も
ジャパンカップ当日を以て展示終了となります。まだご覧になっていない方はぜひ足をお運びくださいね。巨大なディープのお写真があなたをお迎えしますよ。
ジャパンカップについてはホント、毎週の競馬以上に悩みました…。
キタサンブラックは強い。これはよーくわかっています。実際、取材をしても普通に「いいな」と思える状態です。陣営もいつもどおりの笑顔ですし、何ら不安はないように思います。
ただ、調教が今年の中ではソフトだったというのも事実でしょう。振り返ってみれば、陣営は今春、1日に坂路3本を上るなどかなりハードな調教を課していましたからね。この変化には戸惑う方も多いかと思います。
それでも、今回もわたしは
キタサンブラックの底力を信じます。理由は3つあります。
一つ目は陣営はもともと柔軟な考え方でプランを組み立てるタイプだということ。
宝塚記念の頃、清水師は「以前から使うごとに『強い強い』と思うばかりで、果たしてどこまで強いのかというところだったので。それならば鍛えるだけ鍛えて、行くところまで行ってやろうという気持ちです。」と話していました。しかし、これといった理由がわからずに負けてしましました。調教のハードさが負けに直結した訳ではないと思いますし、この秋も鍛え続ける方法もあったと思います。
大昔ですが、ダービー馬だった
ミホノブルボンに対して戸山師は最後まで鍛える道を選びましたね。昨年の
ジャパンカップも直前は比較的軽めの調整でしたし、春の印象が強烈だったからその対比に不安を覚えるのかな? と思いました。
でも、清水師は秋からは「もう十分に鍛えたので」と方向転換しています。清水師はもともとレース選びも東西の番組を両方見比べるなど、可能性を広く求めながら柔軟に対処していく先生です。清水師は
キタサンブラックが好きで好きで「感謝しかない存在」なほどです。次の
有馬記念で有終の美を飾りたいという気持ちも当然あるでしょう。だからといって必要以上に調整を手控えるのは逆に馬にとっていいことではありません。そのあたりは十分計算した上での仕上げなので、心配は無用なのです。
二つ目は
キタサンブラックはもともと省エネタイプの気質であるということ。
以前からの取材メモを読み返すと、3歳時から「無駄なことをしない馬」(清水師)だと評されています。優秀な競走馬は省エネが上手い馬が多いです。その方法は千差万別で、たとえば
ブエナビスタならある時期から調教ではさっぱり走らなくなりました。本番で本気で走れば自分の任務は果たされることを理解していたのでしょう。
キタサンブラックの場合はオンオフの切り替えがうまく、普段はとてもおっとりしています。木曜日にも厩舎で様子を見たのですが、馬房ではとても落ち着いていましたよ。ほんと、いつもと変わらぬブラックでした。
三つ目は叩き2走目がベストの状態であること。これは
全休日にニュースでも書きました。
キタサンブラックは叩き2戦目が一番レースで力を発揮しやすいようです。
「やはり1回レースを使った後のほうがいいです。いつも一生懸命走って結果を出してくれていますし休み明けでも頑張ってくれていますけど、叩き二走目が一番理想かもしれませんね」(辻田厩務員)
そんなわけで、今年も
ジャパンカップが終わったあと、「
キタサンブラックはやっぱり強かったね」という会話をしているような気がします。
(取材・写真:花岡貴子)