キタサンブラックがいなくなった清水久キュウ舎はどこか寂しげ。担当だった辻田キュウ務員も、無事に種牡馬入りさせることができてホッとしている一方で、「やはり寂しいですよね。GIシーズンになったら、余計にそう思うかもしれません」と“ブラックロス”状態になっている。
キュウ舎を活気づけるために必要なのは、何より馬の活躍。大看板がいなくなっても、その闘志を受け継いで、いまだ現役を続けている「同級生」が走れば…。
GIII
根岸S(28日=東京ダ1400メートル)にエントリーしている
アキトクレッセントは、
キタサンブラックのデビュー戦を前にした最終追い切りで併せ馬の相手を務めたのをはじめ、これまで何度となく調教パートナーになって、互いに鍛錬を積んできた“同志”だ。
「同じ年だし、僕の馬は追い切りもよく動くので、確かに(キタサン)ブラックとは、よく併せ馬をしました。実は追い切りで負けたことは一度もなかったんですよ。まあ、ブラックは追い切りで走るという感じでもなかったですけど」とは
アキトクレッセントを担当する宮下助手。以前はその攻めの良さがなかなか競馬に直結しなかったが、「最近はようやく良さが生きるようになってきまして。いい意味で、がむしゃらさがなくなって、気持ちをうまくセーブできるようになったのが大きいのかな」。
この
アキトクレッセント、もともと右手前で走るのが好きな馬で、直線で右手前になる左回りの方が得意。
根岸Sの舞台=左回り東京の1400メートルはベストと言っていい。ちなみに右回り阪神が舞台だった前走の
ギャラクシーSでは、直線に入っても手前を替えることができず。それでいて勝ち切ってしまったのだから、着差以上に強い競馬だった。そう、15番人気ながら、3着に粘走した昨秋のGIII
武蔵野S(東京ダ1600メートル)の走りは決してフロックではないのだ。
「ひょっとしたら、
キタサンブラックがいなくなって“今度は俺の番だ。あとは任せろ”なんてことを思っているのかもしれません」(宮下助手)
「ブラックロス」に包まれた清水久キュウ舎で、次の看板馬になるのは“遅咲き”
アキトクレッセントなのか。
根岸Sを勝って「いざGI
フェブラリーSへ」となれば、
キタサンブラック不在の寂しさを紛らわせることができるかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ