重賞未勝利の
ダンビュライトが快勝し、GI馬
ゴールドアクターがシンガリ11着に沈んだ21日のGIIアメリカJCCは「頑強さ」がサラブレッドにおける重要な能力だと再認識させる出来事だった。優勝馬の唯一無二ともいえる武器は、
朝日杯FS(13着)から始まり、
皐月賞(3着)→
日本ダービー(6着)→
菊花賞(5着)と王道路線を駆け抜けた濃密なキャリアだろう。
「
アパパネがGIを5つも勝てた理由? それは常に狙ったレースを使えたから。いかに素質があろうとも、舞台に立てなきゃそれはゼロだから」とは
国枝栄調教師の言葉だが、経験は成長の糧となり素材を磨く。3歳で
有馬記念を制した
サトノダイヤモンドを筆頭に
タレント揃いと思わせた5歳世代は、強さとモロさが同居する“ガラスの世代”(
皐月賞1、5着の
ディーマジェスティ、
リオンディーズはすでに現役引退)。
キタサンブラックなき古馬戦線をリードするのは、頑強な4歳世代かもしれないと思わせた一戦でもあった。
さて、その意味でも今、当方が注目する新馬が1頭いる。今週の東京日曜芝1800メートルでデビュー予定の
ディープインパクト産駒フィエールマンだ。先週の追い切り時計(17日=南ウッド5ハロン67.4秒)を見てキュウ舎所属の
嶋田純次が「えっ、助手が乗った数字ですか? てっきりジョッキーが乗ったものだと思っていました」と目を丸くしたように、素質馬揃いの
手塚貴久キュウ舎にあっても稽古の動きは群を抜く。
「スケールの大きさを感じさせる、ほれぼれするフットワーク。姉(
ルヴォワール)もいいアクションをする馬だけど、父が
ハーツクライからディープに替わってさらに切れ味に磨きがかかった感じ」と管理する手塚調教師もゾッコンの口ぶりなのだ。
それでも…。「現時点でダービーは見ていない。うまく運べば使うかもしれないが、勝負は古馬になってからでいい」(同師)と陣営を至って慎重にさせる要素がある。それは新馬→
ミモザ賞と連勝しながらも、クラシックを棒に振った前述の姉の存在である。
「姉は体質が非常に弱くて、ちょっとしたことでケガをしやすいうえに治りも遅い。まともなら世代上位の素質があるのに(
紫苑S6着後の)復帰のメドがまだ立たない近況で…」と姉弟を担当する名畑俊助手が語るように、無事是名馬と対極にある一族である。過保護にならざるを得ない背景がつきまとうのだ。
「とはいえ弟は現状で弱さを見せていない。このまま無事に使っていけるかが勝負どころ」と同助手。手塚キュウ舎ピカイチの素材は真の“強さ”を見せられるのか…今後の動向に注目していきたい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ