「
阪急杯・G3」(25日、阪神)
競馬の神様が最後のひと押しをしてくれた。
武豊に導かれ、早め先頭からゴールを目指した7番人気
ダイアナヘイローが、人気馬2頭の猛追を抑えて重賞2勝目。今月末で定年を迎える福島信晴調教師(70)=栗東=は、見事に有終の美を飾った。大根田厩舎に転厩する同馬は、この勝利で
高松宮記念(3月25日・中京)の優先出走権を獲得した。
これが最後。そう胸に刻んで送り出した
ダイアナヘイローが、先頭に立ってゴールを目指す。歓声の響く直線。急追する人気馬2頭の蹄音を遮り、何かに導かれたように、栄光をつかみにいく。この日で戦いの場から去る福島師の思いも乗せて、人馬は祝祭の中に飛び込んで行った。
「きょうは何といっても先生が最後でしたから。最後はいっぱいいっぱいでしたが、何とか勝ってくれ、と思って競馬の神様にお願いしました」。去りゆく指揮官に届けた惜別の勝利を、
武豊は笑顔で振り返る。「とてもお世話になった先生なので…。競馬にはこういうこともありますし、それに携わることができて本当に幸せです」。感謝しかない胸の内を明かした。
祝福の握手。自然と湧き起こる拍手。「最後の最後に重賞まで勝たせていただき、感謝しています」。トレーナーの目からは熱い滴が流れ落ちた。馬場の荒れてきた京都(京都牝馬S)ではなく、きれいな馬場を求めて阪神の開幕週へとスケジュールを組み直して重賞V。ラストウイークに3勝をマークしたさい配は、さえにさえていた。前走16着からの逆転劇は、まさに30年に及ぶ調教師生活の集大成と言っていい。
最高の形でバトンを渡すことになった
ダイアナヘイローは今後、大根田厩舎へと移り、次の目標へと向かう。「まだ馬は若いですからね。G3と言わずG2、G1へと出走してくれれば」。父親のように、まな娘の夢の続きを語った時にはもう、優しい笑顔が広がっていた。
提供:デイリースポーツ