先週の
NHKマイルCのレース後、印象的だったのが、勝利した
ケイアイノーテックの鞍上・
藤岡佑介の次なる言葉だ。
「初めて追い切りで乗った時、本当にマイルの馬かと思うくらい操縦性が高かった。さらに、追って追ってエンジンがかかるタイプ。距離は延びてもいいと思う」
示唆したのは中距離路線転入での新たな可能性。東京マイルはスピードだけでは押し切れないが、2着
ギベオンともども、その資質が好走を後押ししたか。案外、今週の
ヴィクトリアマイルも中距離でモマれてきた組が穴かもしれない。
さて、路線変更という点では今週も面白い馬がいる。まずは
NHKマイルC除外で一転、ダートに矛先を向けた
アイスフィヨルド。デビューから10戦はオール芝でも青竜S(東京ダ8ハロン)登録には狙い澄ましたムードが漂う。
「前走のニュージーランドT(5着)は出が良かった割に後ろに下げてしまったし、加えて馬場も外伸び。インを突いて0秒3差なら頑張ったと思う。やれる手応えをつかめた分、GIにも出したかったね」
こう語る
武藤善則調教師だが、実は他の選択肢が先週時点では残されていた。それは橘S(京都芝7ハロン)出走だ。登録時点でわずか9頭、取り消しも出てレースは7頭立てという美味なるオープン特別。普通なら見逃す手はないが、登録したのは除外濃厚な
NHKマイルCのみ。当初から視線が砂路線に向けられていたことの証しだろう。
「
クリストワイニング産駒の大半はダートで勝ち上がり。血統的に合いそうだし、馬もやたら元気がいいから新味を求めたい」。トーンは淡々としていても、内心は意欲満々の参戦だ。
さらに、もう一頭は
京王杯SCに照準を定めた
テオドール。オープン初戦の
白富士S(東京芝10ハロン)は5着、続くGIIIダービー卿CT(芝8ハロン)で4着。ただ、着順を押し上げたのは決してハンデの恩恵ではないというのが国枝調教師の見立てである。
「中距離で勝ち上がってオープン入りしたけど、本質的に折り合いに難があり、緩急が利かないタイプ。それでも未勝利以来のマイルになった前走は、しっかりタメが利いて、いい走りができた。やはりペースが速いと競馬がしやすいし、千四の距離は、むしろ合う。前走の競馬ができれば面白いんじゃないの」
持ち味はスピードの持続力、加えて
母アンブロワーズがマイル以下の馬だった血統を踏まえれば、短距離で躍進の可能性は十分。両陣営の狙い澄ましたチャレンジに注目しよう。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ