厩舎の解散、馬主との意見の相違、そのほか馬があふれている厩舎から空き馬房のある厩舎への移転など、様々な要因によって競走馬は「転厩」する。そして、その理由が何であれ、転厩初戦からいきなり結果を出すのは、なかなか簡単なことではないらしい。
「それまでとは調教のやり方が変わってくるし、カイバも変わります。何より周囲の環境が変わるというのが、サラブレッドにとって影響が大きいんだと思います。ウチも軌道に乗るまでには時間がかかりましたから」
3年目の寺島調教師の弁だ。解散厩舎からの転厩馬が“寺島
スタイル”になじむまでにはかなりの苦労があったようだ。
GIII函館ス
プリントS(17日=函館芝1200メートル)出走馬の中にも、同様の経緯をたどった馬がいる。2月いっぱいでの福島厩舎解散に伴い、大根田厩舎に移ってきた
ダイアナヘイローだ。
転厩初戦の
高松宮記念は引き続き同じ人間が担当し、カイバも同じものにして臨んだのだが、それでも最下位18着と散々な結果に終わった。これもやはり転厩の難しさなのか…。
「う〜ん、
阪急杯を勝った後で馬がしんどかったんちゃうかな。早めにかわされて“もうや〜めた”って感じの競馬になっとったからな。レース後は馬に元気もなかったし、それまで走ってきた疲れがあったんだと思う」(大根田調教師)
転厩馬のもうひとつの難しさがまさにこれ。特に定年直前の厩舎は最後の書き入れ時とばかりに、解散直前までレースに使いたがる。「余力ゼロ」の状態で新たな厩舎に移ってくる場合も決して少なくはないのだ。
ダイアナヘイローもこのパターンだったとすれば、
高松宮記念の大惨敗を気にする必要はなくなる。その後にひと息入れたことで、しっかりリフレッシュ。仕切り直しのこの一戦こそが“大根田版”
ダイアナヘイローの本当の意味でのスタートと言っていい。
「前走時に比べると、状態は明らかに持ち直してきているよ。函館の洋芝がどうかという面はあるけど、小回り平坦というコース形態は間違いなく向くからね」(大根田調教師)
ちなみに大根田厩舎は昨夏、函館に4頭を連れて行って、そのすべてが勝ち鞍を挙げる名采配を披露。今年の
ダイアナヘイローも土産なしに栗東に戻ってくることはないとみた。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ