12日の調教後、友道厩舎で安田助手と談笑していると、高岡記者が「グシシ」と笑いながら、こちらに接近してきた。当コラムと同日掲載の「トレセン発(秘)話」用に足を運んだことはミエミエ。もちろん、お目当ては
宝塚記念に出走する
ヴィブロスだろう。
友道調教師に根掘り葉掘り聞いた情報を、彼がどのように料理したのか。それは紙面を見ていただくとして、当コラムの主役はドバイ帰りでも絶好調の彼女ではなく、彼女のおいに当たる
ブラヴァス(牡=
父キングカメハメハ)のほう。2013、14年の
ヴィクトリアマイルを連覇した
ヴィルシーナの初子である。
元
メジャーリーガーの「大魔神」佐々木主浩氏の所有馬にして、7月8日の中京芝2000メートルに
武豊でデビュー予定。ちょっと先の話でも、「無事に初戦を飾れば、
札幌2歳Sへ」と聞いている素材なら、知りたいファンも山ほどいるだろう。
そんな発想から今回の主役に抜てきしてみたが、
ヴィブロスはもちろん、
ブラヴァスの
母ヴィルシーナにも乗っていた安田助手からは「追ってからが意外と“ない”感じ」と肩透かしの答えが…。もしかして、話題先行の馬?
その疑念は併走相手に完敗した13日の追い切りで確信へと変わりそうになったが、この話にはもちろん、続きがある。
「確かに追ってから伸びなかったんですけど、ある程度のところまでで今回は十分だったので、それ以降は強くやりませんでした。まずは走ることが嫌いになってしまわないように。そこが大事な部分ですからね」
3歳夏に急成長した
ヴィブロスと違い、2歳時から頭角を現して牝馬3冠レースはすべて2着だった
母ヴィルシーナ。だが、彼女は早熟だったわけではなく、「成長曲線が違っていただけ」と安田助手は言う。
「
シュヴァルグランも含めての晩成血統。それは
ヴィルシーナの子の
ブラヴァスにも共通していて、乗り味はいいけど、それ以外はまだまだといった印象。でも、それでいいんですよ」
彼が慌てないのは「この血統の良さは脚元が丈夫なところ。なので馬体さえしっかりとしてくれれば、強い調教をかけられる」という認識を持っているため。ハードな調教を課すべきタイミングに、走ることを嫌がるような馬になっていてもらっては困る。ゆえに前述のような調教内容になったわけだ。
「父が
キングカメハメハの牡馬。おそらくは
ヴィブロスよりは
ヴィルシーナに似たスピードの持続力で勝負するタイプになると思いますが、どのような馬になったとしても大丈夫。走ってきます」
初戦から勝ち負けになると踏んではいるものの、見据えているのは7月8日より、もっと先。その軌跡の見届け役に立候補した次第である。
(松浪大樹)
東京スポーツ