「高倉でーす」
「
ノーブルでーす」
「2人合わせて…」
そんな息ピッタリの掛け合いが聞こえてきそう。太い絆で結ばれている
ノーブルマーズと
高倉稜ジョッキーの“名コンビ”が、
グランプリの舞台で大旋風を巻き起こす気がしてならない。
エントリー16頭中、デビュー戦から全レースでコンビを継続しているのは、この高倉&
ノーブルマーズのみ。2015年6月の新馬戦(2着)から丸3年、28戦も…というから驚きだ。
乗り替わりが常の近代競馬界において、まさに異例。ツーショット写真を要求すると、どちらからともなくスッと寄り添ってパシャ! まさに人馬の絆を感じさせる暗黙の意思疎通だ。
「ちょっとアカンかったらクビになる時代。オーナーの理解がなければ、あり得ないことですから。本当にオーナー、宮本先生に感謝です」とは手綱を取る高倉。一方で“相方”の
ノーブルマーズのキャラも際立っている。
「以前は競馬に乗るのも怖くなるほどヤンチャだった。今はだいぶオジサンになってきましたが、とにかくマイペースなんですよ」と高倉が分析すれば、宮本調教師も「もうとにかくトボケているから…」と笑うように仰天エピソードには事欠かない。
雷雨の中で行われたセリでは、雷の音に驚いてまさかの放馬。そのためセリに参加する人数が激減して1100万円という“オイシイ”価格で落札された。今現在、稼いだ賞金は1億6000万円超。まさにオーナー孝行の馬と言えようか。
馬っ気も芸人さながらだ。「ホントに牝馬が好きみたいで。あれだけ牝馬を見つめる馬って珍しい」と高倉が証言するように、あるレースではゲート入り直前に牝馬を見つけ、並足をピタッと止めて観察し続けていたという。
そんな愛すべき馬に対し、高倉は日頃から「大丈夫だよ」「怖くないよ」などと話しかけ、信頼関係を築いてきた。
「とにかく声をかけることを大切にしてきました。それにずっと乗っているから、今回こうだから、次はああしようって臨機応変に対応できる。やっぱりジョッキーとしては、同じ馬に続けて乗れるのはいいですよね」
坂路での最終追い切りでもコミュニケーションは抜群だ。
「あまり無理せず、ダメージが残らないように乗りました。馬場の割には動いたし、悪くないですね。最近は競馬っぷりが変わり、ここ2走は本当にいい面が出てきた。気持ちのタフさは他の馬とは違うと思いますね」
自由奔放に駆ける相方を、時にムチでツッコミ、きっちり操縦する高倉。狙うはM-1
グランプリ…ではなく、競馬界の
グランプリ制覇。文字通り「人馬一体」になって取りに行く。
(童顔のオッサン野郎・江川佳孝)