競走馬にとってダメージが残りやすいレースというのは、どんなものだろうか。「やっぱり馬は本質的に怖がりな動物だし、窮屈になったり不利を受けたりするレースが心身ともに一番こたえると思いますよ」。こんなことを言うのは沖調教師だ。
かつて管理していた
メイショウユメゴゼという馬は調子の変動が少なく、牝馬にして9歳まで現役を続けた
タフネスだったが、4歳時にゴール前で前に入られる不利を受けた時はガタッときて、立ち直るのに半年もの期間を要したという。
「あとはレースで一番苦しくなるゴール前での競り合いとかになって目一杯走らされた馬というのは疲れが残りやすいでしょうね。
メイショウユメゴゼ自身は逆に気を抜くタイプだったので、あの年齢までずっと使えたという面もあるんですが」
沖師の話を聞いていれば、今週の
中京記念に出走する
スマートオーディンの前走(
エプソムC12着)に関して兼武助手が「疲れが残らないレースだった」と強調するのも納得だ。スタートから行きたがるとみるや、鞍上の
武豊が無理に抑えずスッとハナへ。直線で後続にかわされたら無理をせずにフィニッシュして“あとに残らない”競馬をしていたからだ。
「長期休養明けだったのでレースを使った反動が心配でしたが、スッと行ってスッと下がっていく競馬だったんで(笑い)。疲れは全く残らなかったですね。翌週からすぐ乗り出せたし、脚元も大丈夫です」と同助手だ。
キャリア8戦で重賞3勝、ポテンシャルの高さはGIIIレベルでは抜けている。「ひと叩きしてガス抜きもできているし、距離が短くなるのもプラス。稽古の動きもいいし、やっぱり走る馬ですよ」。松田厩舎から転厩2戦目になる今回こそが、池江版
スマートオーディンの本当のスタートになりそうだ。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
東京スポーツ