この時期は中央の一線級の馬たちのほとんどが休養に入っていて、さらにダート短距離路線は盛岡・
クラスターCとメンバーが分散することになる。それゆえ中央勢は軽いメンバーになることもめずらしくないが、今回はいずれも重賞未勝利。むしろそのような馬がここで賞金を稼いで飛躍を目指す舞台ともいえる。ダート
グレード勝ち馬は、単勝234倍という大穴で
黒船賞を勝った兵庫の
エイシンヴァラーだけというメンバーとなった。
そして勝ったのは、兵庫から出走した“エイシン”のもう1頭、
エイシンバランサーだった。それにしても同じ
新子雅司厩舎から出走したエイシンの2頭は、当初からそれを狙っていたのかどうか、まったく見事な連携だった。
スタートから
エイシンヴァラーが行く気を見せたが、さすがに11頭立ての大外枠もあり、3番枠から好ダッシュを見せた
ブルミラコロの2番手に控えることになった。
ルグランフリソンが3番手で、1番人気の
ヨシオが続き、
エイシンバランサーはそのうしろから。
コーナーを4つ回る地方の1400m戦は、コーナー2つの中央の1400m戦と違い、向正面で流れが落ち着き息が入ることもめずらしくない。しかし今回は、逃げた
ブルミラコロを、ぴたりと直後で
エイシンヴァラーが突いて息が入るところがなかった。
向正面中間、
エイシンヴァラーの
吉村智洋騎手が追い出して
ブルミラコロにさらにプレッシャーをかけると、それを見計らっていたかのように、5番手にいた
エイシンバランサーの
下原理騎手も進出を開始。ともすればタイミング的には早仕掛けだったかもしれない。
そして3コーナー手前、
エイシンヴァラーが一杯になって下がり始めたところで、今度は
エイシンバランサーが
ブルミラコロの直後にぴたりとつけた。チーム・エイシンの見事なタイミングでのバトンタッチといえよう。前・後半で異なる馬に直後で突かれ通しとなった
ブルミラコロはたまらない。直線でも粘ってはいたが、長くしぶとく脚を使った
エイシンバランサーに最後は屈することとなった。
差のない3番手を追走していた
ルグランフリソンも直線では一杯になって4着。
ヨシオは、
エイシンバランサーがペースアップした向正面で一緒に上がっていこうとしたものの反応はイマイチ。ゴール前でようやく3着に盛り返したのは、2000mの
マーキュリーCで逃げて2着に粘った底力だろう。
新子雅司調教師と
下原理騎手のコンビは、
エイシンヴァラーによる
黒船賞に続いて、今年ダート
グレード2勝目。新子調教師は、ほかに
タガノジンガロによる
かきつばた記念(2014年)制覇があり、下原騎手には同じく佐賀で
チャンストウライによる
佐賀記念(2008年)制覇がある。ともにダート
グレード3勝目となった。
それにしても新子厩舎の主戦(所属ではないが)の下原騎手は、
エイシンヴァラーで
黒船賞を制していながら、今回
エイシンバランサーのほうに騎乗したというのは、勝機ありと見てのことだったのだろうか。昨年は新子&下原のコンビが兵庫の調教師・騎手リーディングとなり、下原騎手は昨年初めて全国リーディングも獲得。そして
エイシンヴァラーの吉村騎手は、目下のところ全国リーディングのトップ。勢いのあるチームによる、まさにあっぱれなダート
グレード制覇だった。