先週の当欄で松浪記者が指摘した音無厩舎の2頭は上々の成績(
ききょうS=
ジョニーズララバイ2着、
芙蓉S=
ミッキーブラック1着)を収めた。早い段階で勝ち上がった馬が秋競馬への出走を待たず、前倒しで使ってくるケースは関東にも見受けられる。
中山最終週の今週末はオープンの
カンナS(芝外1200メートル)、500万下の
サフラン賞(牝馬限定=芝外1600メートル)が組まれているが、翌週の4回東京初日にはGIII
サウジアラビアRC(芝1600メートル)も行われる。当然ながらいろいろてんびんにかけてのレース選択となるわけだ。
その
サフラン賞を予定している
コントラチェック(藤沢和)は札幌での2戦目が2着に1秒2差の圧勝劇。兄姉に
ムーンクエイク、
バウンスシャッセがいる良血で、来春に期待が膨らむ好素材であることは間違いない。ところが藤沢和調教師は「今の時期は(馬の)入れ替えも大変だから」とポツリ。先週の音無勢同様に3歳未勝利が終わるタイミングにおける馬房調整、2歳馬のレース選択の難しさをのぞかせた。
もともと東京志向の強い藤沢和調教師とはいえ、この4回中山での出走は先週までの開催7日間でわずか5頭。うち2頭は
レイエンダ(GII
セントライト記念)、
レイデオロ(GII
オールカマー)といったメイン出走馬で、いわば“よほどのレース”でない限り出走しない戦略は明白である。
それだけにこの
コントラチェックの選択は確実な勝利を狙ってか、はたまた重賞を避けた(
サウジアラビアRCには同厩
グランアレグリアが出走予定)だけなのか…。深読み、邪推の部分でも興味が湧く一戦となった。
この
サフラン賞には新馬V→GIII
新潟2歳S4着と
ステップアップ中の
ジョディー(戸田)も出走。こちらはむしろコンスタントに使ってくることで“そこにレースがあるから”的な軽快なレース選択(=戦略)を感じるが、初戦で下した
ウインゼノビアが未勝利→
クローバー賞と連勝したのも同馬の評価を底上げする。
「前走の体重増(16キロ)は成長分。レース後はダメージもなく予定通りの調整ができています。休み明けの影響か、道中ハミをかむ感じだったので、追い切りでも後ろで我慢させて折り合いに注意しつつ。自在性があって前に行ける脚もあるから中山も合いそう。自己条件なら十分好レース」と斎藤助手。モレイラとのコンビも含めて目が離せない存在だ。
最後に
サフラン賞と
カンナSでぎりぎりまで選択を迷っている
キタイ(杉浦)を紹介したい。初勝利こそ3戦目(札幌芝1200メートル)だったが、そこで3着以下を大きく離したこと、初戦の勝ち馬
トーセンオパールがその後にオープンを好走(GIII
函館2歳S5着、
すずらん賞3着)と悪い材料ばかりではない。
「クラス落ち(4歳夏の降級制度=今年で廃止)がない中で、オープンを勝ってしまうと賞金的に春の
トライアルまでが楽な半面、先々古馬と交じった時に“(力が)ちょい足らず”だと後で苦労する」と話すのは杉浦調教師。オープン勝ちで賞金加算を確たるものとし今後の戦略に余裕を持たせるか、それともあくまで条件戦で段階的な
ステップを踏むのかが悩みどころだという。
というのも、
カンナSが例年少頭数で比較的レベルが高くない傾向にあるのを念頭に「おそらく勝っちゃう。重賞でやっていける可能性のある馬だから、春まではそれでいいんだけど。ただ、脚をためていけるから距離は(
サフラン賞の)千六でもむしろいい」
判断の基準は眼前の距離や相手関係にあらず、将来的なビジョン。この馬の秘める能力への自信と期待の大きさが、杉浦調教師の言葉ににじみ出ていた。
(立川敬太)
東京スポーツ