歴史に名を残したあの馬の産駒が今開催の東京でデビューを予定している。07年
日本ダービーを筆頭にGIを7勝。カリスマ的な人気を誇った
ウオッカの5番目の子、
タニノミッション(牝=父インヴィンシブルスピリット・中竹)がその馬だ。
正直、デビューしたこれまでの4頭は期待されたほどの活躍をしていないと言われているが、
母ウオッカだけではなく、その産駒のすべてに乗り続けてきた岸本助手は「人気があった馬なのは分かるけど、その子供に対する期待が高すぎるよ。(タニノ)
フランケルなんて、あれだけ緩い状態でも3つ勝っているわけだし、頑張ってると思う」と周囲の評価に首をかしげる。
確かに最初の2頭は未勝利に終わったものの、現5歳の
タニノアーバンシーは4勝。前述の
タニノフランケルも
武豊騎乗で挑む今週末(13日)の
大原Sで勝ち星を積み上げる可能性があり、まるで走っていないわけではない。とはいえ、単なる名牝ではなく、走るたびに感動を巻き起こしたあの
ウオッカの子だ。期待が高すぎると言われても、母のようにGIの舞台で走る姿が見たい――。こちらの勝手な願いと理解しながら、その日が来るのを期待しているわけで…。
そこで
タニノミッションだ。先週の木曜にゲート試験を合格したばかり。にもかかわらず、早々とモレイラを確保して来週(20日)の東京芝1600メートルでデビューすることを決めた。どう考えても攻め不足。これで本当に大丈夫? それでも、今回も馬上で感触を確かめている岸本助手はキッパリ断言する。
「これは走るよ。兄姉と比べても間違いなくいい。これまでの
ウオッカの子はフットワークこそ大きいけど、軽さがなくてドタドタと走っている感じがあった。でも、こいつは違う。スピードに加えて切れもある。父親が短いところの馬に替わってるのが大きいんだと思うね」
今回の父はインヴィンシブルスピリット。これまでの
シーザスターズ、
フランケルと比べれば、その現役成績は目立たない(GI勝ちはス
プリントCのみ)かもしれないが、種牡馬としての活躍は顕著で、同馬の後継種牡馬であるア
イアムインヴィンシブルはス
プリント王国の
オーストラリアで昨年のサイアーランキング2位になっているほど。今後も繁栄は間違いなしのスピード血統だ。
「胴が詰まっているところがあるし、乗っていても距離が持たない感じはする。まあ、牝馬だからマイルまでこなしてくれれば十分だし、お母さんと同じ路線で
黄菊賞から阪神JFやな」
最後のひと言は冗談半分だが、同助手とは長年の付き合い。その雰囲気で能力の高さを感じているのは分かる。東京競馬場でGIを6勝し、東京の申し子とまで言われた
ウオッカ。もっとも、彼女のこれまでの産駒は東京で勝ち鞍を挙げていない。このコースを大好きな
ウオッカの子が勝つようなことがあれば、感情の高ぶりを抑えられないかも――。トレセン一の
ウオッカファンを自任する記者は思うのである。
(松浪大樹)
東京スポーツ