春の二冠を制した
アーモンドアイが史上5頭目の牝馬三冠馬となるか。大きな注目が集まるなか、第23回
秋華賞のゲートがあいた。
11番の
アーモンドアイは、ややゆっくりしたスタートを切り、中団より後ろの位置取りになった。
同馬の外から出た13番
ミッキーチャームがハナに立ち、12番
オスカールビー、4番
ランドネ、15番
ハーレムラインらがつづく。
そのままの隊列で1、2コーナーを回って行く。
ハーレムラインの
大野拓弥が「いいポジションをとることができた」と振り返ったように、先行馬向きのややゆったりした流れになったが、向こう正面で少しペースが上がり、馬群が縦長になって行く。
1000m通過は59秒6。中団より後ろの外目のポケットになったところを進む
アーモンドアイは、先頭から12〜13馬身離れている。
「今日はずっと心配していた」とルメール。
「馬場入りのときも、ゲートのなかでもチャカチャカしていた。スタートもあまりよくなかった」
国枝栄調教師によると、「仕上がりは8分かもうちょっと」といったところだったという。もし負けていたら、勝負の分かれ目はスタート前にあった、ということになっていたかもしれない。
先頭の
ミッキーチャームが2番手との差を2、3馬身に広げて3コーナーに入った。
3、4コーナー中間で馬群が凝縮されたが、逃げる
ミッキーチャームは抜群の手応えだ。
アーモンドアイはまだ10馬身ほど後ろにいる。
ラスト600m。4コーナー入口でもまだ
アーモンドアイはスパートしない。先頭との差は8馬身ほどか。
「3、4コーナーで前の馬が動かなかったので、大外に行った。コーナーが狭いから、ちょっと
バランスが悪くなった」とルメール。
4コーナーを回りながらようやくルメールの手が動き、スパートした。しかし、ラスト400m地点で先頭との差はまだ7馬身ほどもある。
直線に向くと、
アーモンドアイは大外から別次元の末脚を伸ばし、次々と前の馬を抜いて行く。
「今日の瞬発力は素晴らしかった。まだ信じられない。反応が速くて力強かった。もっと強くなったら……飛びます」とルメール。
ノーステッキで内の馬をごぼう抜きにし、ラスト150m地点で粘る
ミッキーチャームに並びかけたとき、軌道修正の意味か、右ステッキが入った。
そのまま、飛ぶようにゴールを駆け抜け、史上5頭目の牝馬三冠馬となった。
「
アーモンドアイは特別な馬です。来年、
凱旋門賞が
メインターゲットになったら、とても楽しい」
そう話したルメールは、3、4コーナーで絶望的な差に見える位置にいても、まったく動じることなく、直線に向くのを待った。その自信が見ている私たちにも確かに伝わってきた。どんな馬でもこうしたレースができるわけではもちろんない。「特別な馬」での勝ち方を、名手が示した好レースであった。
(文:島田明宏)