先週木曜の美浦ではジョアン・モレイラの
JRA騎手試験不合格がトレセンの話題を一手に集めていた。
「他の国なら三顧の礼を尽くしてでも迎え入れたい
スーパージョッキー。それがあっさり不合格なんだから…。日本の競馬にとっては本当にもったいない結果だったね」
こう語ったのは美浦の御意見番こと、
国枝栄調教師。モレイラといえば
JRA通算84勝を挙げ、その勝率は驚異の3割4分3厘。雷神やマジックマンと称される卓越した騎乗技術を思えば、通年免許取得なら
JRA記録を優にしのぐ年間250勝も十分あり得たろう。
しかし結果は一次(競馬法規に関する筆記試験)でバッターアウト。世界の名手にも容赦しなかったことで、試験の公平性が改めて証明された形ではあるが…。
「モレイラの涙もわかるよ。本人にすれば事態を理解できず、
パニックに陥ったのだろう。短期免許や招待競走(WASJ)はウエルカムで、なぜ通年免許だけノーなのか。公正競馬という観点からいえば、その理屈は俺だってわからないもん」(国枝調教師)
今後、問われるとすれば現行の試験のあり方ということか。もっともM・デムーロ→ルメールに続く外国人騎手合格なら、騎手間の
パワーバランスはこれまで以上に変化しただろう。日本人騎手の育成という点において、それが大きな壁になるという見解がある。
ただ、その障壁は“弊害”というべきものではあるまい。どのスポーツにおいても、レベルが上がり勝利が難しくなるに付随してアスリートの技術は向上していく。
冒頭の国枝師の「もったいない」にはおそらくそんな意味が含まれている気がするのだが…。宴会野郎としては、これにめげず“雷神”の再挑戦を願うばかりだ。
さて、今週の
菊花賞はそのモレイラが騎乗する関東馬
グロンディオーズに注目しよう。デビューからの4戦、ムーア→ルメール→ボウマン→ルメールと超豪華なバトン回しで3勝を重ねた“世界仕様”の遅咲きステイヤーだ。
「本当に性格が穏やかで、競馬に行ってもそんな面を出し、出遅れもしょっちゅう。でも押して位置を取ってもかからない操縦性の高さが、何より彼のいいところ。もともと心臓や体幹が優れた馬で、今回はモレイラがどう乗ってくれるか楽しみ」と
田村康仁調教師。その期待通り、反骨精神あふれる手綱さばきを見せてくれるに違いない。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ