「
エリザベス女王杯・G1」(11日、京都)
ついに、ついにこの日がやってきた。3番人気の
リスグラシューが直線で末脚を伸ばし、逃げ粘る
クロコスミアを首差とらえてV。4度の銀メダルという悔しさを乗り越え、4歳の秋、G1・8度目の挑戦でつかんだ金メダルだ。この日、JRA通算100勝を達成したモレイラにとっても、初コンビで待望のJRA・G1初タイトルをゲットした。
“雷神”と呼ばれる男の魂が、真っ赤な炎となってゴールに突き刺さった。
勝負を懸けた直線。逃げ粘る昨年の2着馬
クロコスミアに、ただ1頭、外から襲い掛かった
リスグラシュー。しっかりと目標を見据え、パートナーを信じて加速した先に、栄光のゴールが待っていた。右のこぶしを何度も握り締め、沸き上がる歓声とシンクロしていく鞍上のモレイラ。心の叫びを、止めることができない。6度目のチャレンジ。初めてつかんだ日本でのG1タイトルは、名手の胸を激しく揺さぶった。
託された手綱。モレイラには勝利で応えたい理由があった。「日本でG1を勝つことが夢でした。私が若いうちに父が亡くなったので、少ししか時間を過ごすことはできなかったのですが、いつも家族のために頑張ってくれていたことを覚えています。ここ数日、私も家族のことを考える機会があって、父のことを思い出しました。父のためにも勝つことができて、本当にうれしく思います」と、一気に胸の奥に秘めていたものを明かした。
母国ブラジルでの幼い頃の記憶。それが勇気の源なのだ。この日の8Rでスタート直後に落馬。腰のあたりを強打して担架で運ばれたが、続く9Rをキャンセルすることなく騎乗すると、史上最少騎乗数でのJRA通算100勝を達成。日本での通年免許取得は持ち越しとなったものの、“決して諦めない”というスタンスは貫き通した。「いいスタートが切れて、直線でもエネルギーがあった。反応も良く、能力を出すことができて本当に良かった」とG1初制覇まで突っ走った。
「ゲートを最高に出してくれて、折り合い、位置取りも完璧でした」と騎乗ぶりをたたえた矢作師は、「これまで悔しい思い(G1・2着4回)をしてきたスタッフの努力の結晶です」と、8度目の挑戦でついに重い扉をこじ開けた愛馬とチームをねぎらった。
G1馬となって迎える次なる
ターゲットは「香港(12月9日・シャティン)か
有馬記念(12月23日・中山)に」と指揮官は明言。ついにつかんだ
ビッグタイトルを誇りに、さらなる高みへ突き進む。
提供:デイリースポーツ