4月8日福島5Rで落馬、休養中だった中谷雄太騎手が17日、栗東トレーニングセンターで調教に復帰。「7カ月半ぶりでしたが、馬に乗る感覚は変わっていませんでした」と笑顔を見せた。
あと数センチずれていれば、命の危機もあったかもしれない。落馬したのはゴールまで200mを切ったところ。その日デビューを迎えた
ルートロアーは、既走馬相手に掲示板を狙えるかどうかという走りを見せ、中谷騎手も「1つでも上の着順を」という思いだった。しかし、故障を発症。前につんのめるように落馬し、意識を失っていびきをかく危険な状態だった。
同行した
矢作芳人調教師は必死に中谷騎手に声を掛け続けた。その後、意識を取り戻したが、頸椎第1、2骨折。最も頭部に近く神経が集まる箇所だったが、幸い体に障害は残らなかった。
「病院で診断結果を聞いた時、早期の復帰は無理だと思い、早くて半年長ければ1年かかると覚悟していたので、入院中に焦ることはなかったです。以前と同じか、それ以上のパフォーマンスになるまでは復帰できないと思っていたので、もう少し早く乗ることもできたけど、このタイミングになりました」
美浦でデビューしたものの、勝ち鞍に伸び悩んでいた2013年秋、中谷騎手は矢作厩舎に拠点を置き、栗東に滞在。その後、正式に栗東所属になると騎乗数も勝ち鞍も増え、昨年は
ステイフーリッシュでGI・
ホープフルS3着などデビュー21年目にして重賞初制覇が見えるところまできていた。
いっぱい勝つところを見せたい―― 騎手復帰を決意すると、巨人の坂本勇人選手も担当するトレーナーの元、体を鍛えた。
「以前よりも筋肉がついて体の状態はいいと思います。目標としてレース復帰は12月の1週目とは思っていますが、馬券的にファンの方や成績面で関係者の方に迷惑をかける状態での復帰は考えていないので、今後の状態次第では延ばすかもしれません」
奇跡的に助かった命と熱い思いとともに、早ければ来月、中谷騎手が競馬場に戻ってくる。
(取材・文:大恵陽子)