アーモンドアイは、前走・
秋華賞の本馬場入場のさい体の向きを変えるなど、うるさいところを見せていた。そのため、今日の
ジャパンカップではパドックを最初に出て、馬道で
クリストフ・ルメールを背にし、先に馬場入りした。
「前回は出るとき馬に躊躇があったので、トラブルにならないよう、もともと1番枠でしたが、前もって出しました」と
国枝栄調教師。
その1番枠に関しては、ルメールも懸念していた。
「もしスローになって囲まれたら、後方から大外一気の競馬になるかもしれないので、心配しながらスタートしました」
ゲート内で四肢をバタつかせるシーンがありヒヤリとさせたが、
アーモンドアイは、ジャンプするようにまずまずのスタートを切った。そのままハナに立ちそうな勢いだったが、8番枠の
キセキが先頭に立ち、さらに外から
ノーブルマーズも前に行った。
アーモンドアイは、内の3、4番手で1コーナーを回った。
「1コーナーまでがポイントだと思っていました。一番心配していたのは折り合いだったのですが、すぐにいいポジションで折り合い、コントロールが利いていたので安心しました」と国枝師。
ルメールは「1コーナーのあと、
リラックスして、いつものリズムになった。向正面に入って、このポジションを、この馬で進めることが楽しかった。そこでレースは終わったようなもの。ぼくはただのパッセンジャー(乗客)でした」と振り返る。
先頭は
川田将雅の
キセキ。2馬身ほど離れた内の3番手に
アーモンドアイはつけていた。
前半1000m通過は59秒9。国枝師は、このあたりで勝利を確信したという。
「(時計が出やすい)この馬場状態で、流れはけっして速くない。これでだいたいイケるかな、と思いました」
単騎逃げに持ち込んだ
キセキが3馬身ほどのリードを保ったまま3、4コーナーを回った。
川田はこう振り返る。
「とにかく自分の競馬をしようと組み立てました。普通なら当たり前に押し切れる展開でした。が、ほかにも素晴らしい馬がいた。(
キセキは)目一杯頑張ってくれました」
アーモンドアイは楽な手応えで
キセキとの差を詰め、直線へ。ラスト400mでもルメールの手は動かない。ラスト300mで初めて追い出し、右ステッキを入れた。ラスト200mで並んだと思ったらもうかわし、1馬身3/4差をつけてフィニッシュ。2分20秒6という驚異的なレコードに場内がどよめいた。
外国人プレスから、「こうして2番手からものすごいタイムを出すなんて、どんな馬なんだ?」と質問されると、ルメールはこう答えた。
「モンスター。マシーン。サッチ・ア・ストロング・アニマル。いつも日本のプレスに言っているように、ほぼ完璧な馬です。どこからでもレースができるし、すべての強さを持ち合わせている」
日本馬で初の
凱旋門賞優勝馬になるのでは、との問いには国枝師が答えた。
「勝てると思います。
エネイブルと一緒にレースをしてみたいですね」
史上2頭目の3歳牝馬の
ジャパンカップ優勝馬となった
アーモンドアイ。普段は愛らしい美少女が、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。
(文:島田明宏)