牝馬限定戦となった1991年以降、無敗で
阪神ジュベナイルフィリーズを制したのは11頭。最近10年では2戦2勝馬が4頭優勝している。最終回の「GI列伝・阪神JF」は、そのなかの1頭で大激戦を制した、2013年の
レッドリヴェールを振り返る。
■小柄な根性娘が5センチ差の激戦を制す
第65回
阪神ジュベナイルフィリーズの注目馬筆頭は、2戦2勝の
ハープスターだった。前走の
新潟2歳Sでは牡馬を相手に、最後方待機から直線で全馬をまとめて差し切り3馬身差の快勝。それ以来の実戦ながら強烈だったインパクトは、1.7倍の単勝オッズに現れていた。
続く単勝オッズ4.7倍の2番人気に支持されたのは、3戦3勝の
ホウライアキコ。小倉2歳Sと
デイリー杯2歳Sの重賞2連勝は、いずれもハイペースでの先行押し切りで、ここでもスピードを活かした粘り込みが期待された。
レッドリヴェールも2戦2勝での参戦。しかし、単勝オッズは14.6倍の5番人気という評価でしかなかった。
レッドリヴェールはこの年最初の2歳新馬戦を瞬発力勝負で制すと、3か月の休養を挟み函館で行われた
札幌2歳Sへ。このレースは泥田のような不良馬場だったが、中団の内から徐々に位置をあげると、直線での一騎打ちをクビ差で勝利していた。426キロという小柄な牝馬が、
パワーが必要な極悪馬場で牡馬をねじ伏せたのである。阪神JFはそこから3か月ぶりの実戦だった。
デビュー2連勝の内容も悪くなく、阪神JFはデビュー戦と同じ阪神芝1600m。5番人気に甘んじたのは、休み明けと
札幌2歳Sの反動が不安視されたのだろう。さらに、レース当日の馬体重が前走からマイナス8キロの418キロと発表されたことも、不安に輪をかけたかもしれない。
揃ったスタートから、
ホウライアキコは押して好位の外につけた。
レッドリヴェールは少し離れた中団の内目を追走し、
ハープスターは後方に控えた。序盤からペースは速く前半800mは46.3秒、その後もペースは緩むことなく進んでいく。
直線を向き
ホウライアキコが先頭に立つ。しかし、道中は先行勢を見ながらレースを進めていた
フォーエバーモアが、残り100mで
ホウライアキコを外から交わす。このときさらに外から差を詰め、並びかけていったのが
レッドリヴェールだった。そして、この2頭の間に猛追した
ハープスターも突っ込んできて、ゴール前は3頭の叩き合いとなる。並んでのゴールは写真判定の結果、クビの上げ下げによるわずか5センチ差で
レッドリヴェールが制していた。2戦2勝馬3頭の大接戦は、476キロの
ハープスターと460キロの
フォーエバーモアを抑えて、418キロの
レッドリヴェールに軍配が上がったのである。ちなみにこの馬体重は、
グレード制導入後の阪神JF優勝馬のなかで、390キロの
スエヒロジョウオー(1992年)に次ぎ、
ジョワドヴィーヴル(2011年)と並び2番目に軽い。
小柄な根性娘は、鞍上の
戸崎圭太騎手に
JRA移籍後初めての、そして
父ステイゴールドには牝馬の産駒で初めてのGI勝利をプレゼントした。