ゲートが開くと、場内がどよめいた。
北村友一が乗る2番人気の9番
クロノジェネシスが出遅れたのだ。
1番人気の
ダノンファンタジーは横並びのスタートを切ったが、鞍上のクリスチャン・デムーロは内に進路をとりながら手綱を抑え、後方に控えた。
「
リラックスして、いい位置でレースができた」とC.デムーロは振り返った。あえて、後方のポジションをとりに行ったのだ。
1番枠から出た
ベルスールがハナに立ち、
メイショウショウブ、
ラブミーファインらがつづく。
福永祐一の
ビーチサンバは中団、
武豊の
シェーングランツは後方の内で、外を
ダノンファンタジーが併走している。
有力どころが後方に控えたまま18頭の馬群は流れ、前半800mは47秒0という平均ペースになった。このまま多くの馬が余力を持った状態がつづくと、直線で馬群がバラけず、後ろの馬が前をさばくのに手間取る恐れがある。
ダノンファンタジーは、前走が1400mだった影響か、やや行きたがっているようにも見える手応えで、C.デムーロが後ろに重心をかけてなだめている。
ベルスールが先頭のまま4コーナーを回り、直線へ。
ダノンファンタジーのC.デムーロは、コースロスを厭わず、迷わず外に進路をとり、さらに外の
クロノジェネシスと馬体を併せてスパートした。「いい位置」という言葉には、スムーズに外に出せる位置、という意味もあったのだろう。
ほぼ最後方と言っていい大外から、これら2頭が猛然と脚を伸ばし、内の馬たちを呑み込んで行く。
ダノンファンタジーが首か体半分ほど前に出たまま激しく叩き合う。
同様に、スムーズに外に出した
ビーチサンバも追いすがる。うちの
シェーングランツは馬群の壁に阻まれ、なかなか前がクリアにならない。
ダノンファンタジーが最後まで抜かせず、2着の
クロノジェネシスに半馬身差をつけたままゴールを駆け抜けた。
勝ちタイムは1分34秒1。3着は
ビーチサンバ、4着は
シェーングランツだった。
「2番人気の馬(
クロノジェネシス)が外に行き、自分も外に行った。そこから素早く反応してくれた」とC.デムーロ。後方から外、というシンプルな戦術に徹し、イメージどおりに反応させる好騎乗だった。
これで外国人騎手が9週連続でGIを勝ったことになる。
ダノンファンタジーは重賞2つを含む3連勝。次週の
朝日杯フューチュリティステークスに出る
グランアレグリアの結果次第だが、2歳女王の座をグイッと引き寄せた。
(文:島田明宏)