前年の1、2着馬が、そのまま1番人気と2番人気に支持された。
前年の覇者
シンボリクリスエスが1番人気。この年は、休養明け初戦の
宝塚記念こそ5着に敗れたものの、
リニューアルされた東京競馬場で行われた
天皇賞・秋を18番枠から豪快に差し切り勝ち。続く重馬場で行われた
ジャパンカップを3着して、引退レースとなる
有馬記念を迎えていた。
一方の
タップダンスシチーは、前年の積極策で
スタイルを確立。
金鯱賞、
京都大賞典と2つのG2タイトルを積み重ね、前走の
ジャパンカップで念願のGI初制覇を成し遂げていた。しかも後続に9馬身、タイムにして1.5秒もの差をつける圧巻の逃げ切り勝ちでのものである。
二冠馬の
ネオユニヴァースが不出走のため、3歳の代表格は
ゼンノロブロイ。
菊花賞こそ内で包まれて不完全燃焼に終わっていたが、後続を置き去りにした
神戸新聞杯の内容から、3歳トップクラスの能力を秘めていることは疑いようがなかった。
レースは、
菊花賞馬
ザッツザプレンティの逃げで幕を開ける。
アクティブバイオが続き、
タップダンスシチーは3番手。前半から11秒台が続き、中盤でも緩まない厳しい流れとなった。
前を行く2頭は早々と後退。
タップダンスシチーも自分のリズムで走れなかった影響か、圧勝だった前走の反動か、反応が今ひとつ。
ここで、
武豊リンカーンが4コーナーで捲って勝負に出る。しかし、その後ろにペリエ騎乗の
シンボリクリスエスが忍び寄ると、残り300m地点であっさりと
リンカーンを交わし、あとは独壇場。ぐんぐんと差を広げてゴールへと飛び込んだ。その差は9馬身。しかも勝ち時計2.30.5は、91年
ダイユウサクのレコードをコンマ1秒更新するものだった。
リンカーンが2着に粘り、
ゼンノロブロイが3着。
稀代の伯楽に渾身の仕上げを施され、名手の完璧なエスコートのもと、圧倒的な力を見せつけた
シンボリクリスエス。強烈な印象をファンに残してターフを去った。