平成時代の
有馬記念名勝負を振り返る「平成有馬列伝」。中山競馬場に「オグリ・コール」が沸き起こった平成2(1990)年の
オグリキャップ“感動のラストラン”を取り上げる。
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“
オグリキャップ、奇跡の復活!”。伝説として、今なお語り継がれる平成2(1990)年の
有馬記念から、はや28年もの月日が経った。
中山競馬場には“芦毛の怪物”のラストランを見届けようと、17万7779人ものファンが詰めかけた。そのなかで「オグリが勝つ!」と、本気で思っていたファンは一体、どれだけいただろうか?そのシチュエーションは、どこか今年の
オジュウチョウサンの挑戦とシンクロする。
その年の秋。怪物と呼ばれたオグリも、長年にわたる過酷な戦いの代償がじわりと体をむしばみ、極度のスランプに陥った。
天皇賞・秋6着→
ジャパンC11着。精気を失った姿に「オグリはもう終わった」と、限界説さえささやかれた。
陣営は
有馬記念での引退を決断。鞍上にはデビュー4年目の
武豊を指名した。ファン投票では1位を獲得したものの、単勝オッズは4番人気というシビアな評価。この逆境にもかかわらず、“運命”に導かれた人馬が奇跡を起こした。
4角で先頭に立つ勢いのまま迎えた直線。抜群の手応えにスタンドがどよめく。ラスト1Fは、場内実況までもが後押し。「さあ頑張るぞ、
オグリキャップ!」。内から
ホワイトストーン、外から
メジロライアンが猛追するなか、最後の力を振り絞り、トップでゴールを駆け抜けた。
高らかと手を突き上げた
武豊の姿に、大観衆は歓喜、熱狂…。揺れるスタンド。そして鳴り止まぬ「オグリ・コール」-。あまりにも劇的な“感動のラストラン”は、競馬史に残る伝説となった。
提供:デイリースポーツ