ラブバレットは前日の競走除外だが、
サンライズメジャーはゲート入りの際に突進、負傷したことでの競走除外。すでにゲート入りしていた馬たちは一旦外に出され、スタートが10分ほど遅れた。これによって精神面で影響を受けた馬もいたかもしれない。
今回は枠順がひとつ大きなポイントとなった。逃げると思われた
マテラスカイが大外枠。2頭が除外となって実質的に10番目の枠になったのは、わずかではあるもののプラスに思われた。対して2番人気で最内枠に入った
サクセスエナジーは、これまで2番手3番手の好位追走はあるものの、逃げたことはなかった。それゆえ外枠でも
マテラスカイがすんなりハナを取るであろうことが予想されたが、そうはならなかった。
マテラスカイは互角のスタートから抜群のダッシュを見せ、そのまま一気にハナに立つ勢い。しかし
サクセスエナジーの
松山弘平騎手は、これをうまくいなしてハナを取りきった。内で包まれて砂をかぶりたくないということはあっただろう。
マテラスカイが前に行こうとするぶんだけ、松山騎手は少しずつうながして、
マテラスカイを前に行かせないまま1コーナーに入った。
ただ
マテラスカイの
吉村智洋騎手にも迷いがあったようにも見えた。この日の第4レースを勝った吉村騎手は今年地方で289勝。兵庫所属騎手として年間最多勝記録を更新し、表彰を受けていた。船橋の
森泰斗騎手を抑えて全国リーディングにも立っている。それほどの騎手が、知り尽くした地元園田コースとはいえ、断然人気に支持された
マテラスカイほどの実績馬に初騎乗となれば、平常心で臨むということも難しかったかもしれない。二の脚のダッシュの勢いを緩めずに行けばハナを取りきれたのではないだろうか。松山騎手が抵抗したあと、吉村騎手がもう一度前に行かせようとしたような場面もあったが、そうした駆け引きをしている間に1コーナーを迎えてしまった。
しかし勝ったのは、
マテラスカイでも
サクセスエナジーでもなく、離れた3番人気の
ウインムートだった。とはいえ
ウインムートも思い通りに運べたわけではない。
マテラスカイを行かせて外に持ち出そうとしたが、外の
サクラレグナムに完全にフタをされてしまった。
サクラレグナムも行かせて、さらに下げて外に持ち出そうとも考えたようで、
和田竜二騎手はうしろを確認した場面があった。そうしているうちに1コーナーを迎えてしまったため、そのままラチ沿いを追走することになった。しかしこれが結果的に功を奏すことにもなった。
3、4コーナーではすでに
マテラスカイが追走一杯という手応えだったので、
ウインムートの和田騎手にしてみれば、あとは
サクセスエナジーさえとらえれば、という展開になった。一方の
サクセスエナジーにしてみれば
マテラスカイのスピードを封じることに成功し、3コーナー過ぎで勝負をつけた。しかし本当の敵は自分の真後ろに隠れていた、という結果だった。
以前からたびたび言ったり書いたりしているが、ダート馬には、中央のダートが得意な馬、地方のダートが得意な馬、そして両方ともこなせる馬、というタイプがいる。
マテラスカイは大井の
東京盃でもハナを切りながら4着に敗れていたように、地方ダートはコース形態なども含めて合わないタイプ。対して
サクセスエナジーは、今回は2着に負たものの、
かきつばた記念(名古屋)、
さきたま杯(浦和)を勝っているように、地方のコーナーを4つ回る1400メートル戦を器用にこなすタイプ。勝った
ウインムートはこれが5歳での重賞初勝利で、地方・中央どちらが得意かというよりも、人気2頭の競り合いを前に見てレースを進めた和田騎手の好騎乗を褒めるべきだろう。
そして3着に入ったのはダート
グレード初挑戦だった
キクノステラ。4着の
サクラレグナムも4コーナーでは
マテラスカイの直後で見せ場があった。この2頭の好走は、それぞれ51kg、52kgというハンデによるところも大きい。
地方競馬で行われているダート
グレードのハンデ戦では、最低で51kgか52kg、最高で60kg程度という範囲に収めなければならないが、ハンデの範囲を能力差がはるかに超えていることが常で、重いハンデを背負った馬があっさり勝つという場面もままある。しかしこのレースでは2013年に51kgの
エプソムアーロン(高知)が2着、2014年には53kgの
ジョーメテオ(浦和)、
サクラシャイニー(高知)がそれぞれ2、3着に好走するなどハンデ差がしっかりと機能している。しかしながら第18回の今回まで1頭も地方馬の勝ち馬が出ていないのは残念なところではある。
笠松
グランプリ快勝から万全の状態で臨んでいたと思われた地元期待の
エイシンバランサーは、向正面から追い通しとなってまったく能力を発揮していない。