先週東西の古馬オープン計4競走で、10キロ以上の馬体増で出走した馬が9頭いた。とりわけ、明暗が分かれたのが京都開催。14キロ増だった
ムイトオブリガード(2番人気)は
日経新春杯6着、10キロ増の
メイショウテッコン(6番人気)は同9着と凡走。対して
淀短距離Sで14キロ増の
ナインテイルズ(5番人気)、18キロ増の
ティーハーフ(9番人気)は同レース1、3着という快走だった。
この時期における体重の増加と、その取捨判断はファンにとって悩ましい限りだが、果たして送り出す側はそのあたりをどう考えて調整するのか? ヒントをもらうべく
手塚貴久厩舎のベテラン・森信次郎厩務員に聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「馬体重ねぇ。毎日のように量っているけど、実はそこまで気にしていないんだ。なぜなら昔と違って今は外厩との連携で馬を作っているし、短期間で加減できるものじゃない。極端に太いと思えば汗取りも着けたりするけど、馬によっては心臓に負担もかかるからね。ちゃんと調教して絞れなければ仕方ないってのが基本スタンスかな」
もっとも人間なら痩せるためにダイエットという手段を選ぶだろうが、サラブレッドがそれを行うのはかなりのリスクが伴うという。
「馬を作る側が心配するのは、太ることより食えなくなることだよ。カイバ量を減らせば絞れるのは確かだけど、そうすることにより、いざ食欲が落ちた時に戻らないという危険性も生じるんだ。だから立派に見えても、実行するカロリー調整は大豆粕や油などの添加物を減らすくらいだね」
では、ファンはどのような視点で馬体重の増減を捉えればいいのか? その問いに対して森さんは次のように語った。
「体重計の前で人間がハミを持って押さえつけるだけで2キロ増、逆にボロをすると2キロ減、つまり馬に何ら変化がなくても4キロくらいは平気で変わるものなんだ。実際、普通に調教をやれている馬なら、10キロくらいの増加は競走能力に何ら影響ないとオレは思うよ。付け加えれば、能力に影響がないのは冬毛も一緒。牝馬には涼しい秋風が吹いただけで、冬毛が伸びる馬もいるくらいだからな。冬場のパドックはむしろ、体の硬さや馬の活気に着目するほうがいいかもしれない」
なるほど、必要なのは現象に惑わされず本質を見抜く目。それが養われるまでは、当方も極端に数字にナーバスにならず平常心で馬を見続けるしかないのかもしれない。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ