ブラストワンピースが受賞した2018年度の「
最優秀3歳牡馬」。記者は
ワグネリアンに1票を投じた。3歳牡馬の勝ち鞍は何よりも
日本ダービーを優先すべき――。だが、それは記者の勝手な見解であって、別の意見があっても問題はない。ただ、個人的に
ワグネリアンが選ばれないのであれば、そのときの受賞馬は
ルヴァンスレーヴではないか、と思っていたので、少し驚いただけの話だ。
友道キュウ舎の大江助手も「“
ワグネリアンでないのなら、
ルヴァンスレーヴかな”と僕も思っていました。3歳馬がダートでできることのほとんどすべてをやっちゃいましたからね」とポツリ。その言葉を聞いたときに、1999年度の
JRA表彰を思い出した。そう、あのときも今回のような陣営との「考えの相違」があったからだ。
その年、GI3勝を挙げた
スペシャルウィークが「
年度代表馬」を逃した。それはまだいい。しかし、受賞した相手は
スペシャルウィークに2戦2勝の
グラスワンダーではなく、国内で一度も走らなかった
エルコンドルパサー。当時、
スペシャルウィークを管理していた白井調教師は「
エルコンドルパサーの残した実績は素晴らしい。しかし、あの馬を負かした
モンジューが日本に来て、それを
スペシャルウィークが負かした。なのに、どうして
スペシャルウィークを下に見る?“日本の競馬は欧州の競馬よりも下ですよ”と言ってるようなもんじゃないか」
そんな昔話をする機会が今週のトレセンであった。あれから20年――。それでも、白井元調教師は当時のことをよく覚えていた。
「あの
凱旋門賞を見てさ。よしっ、この強い馬を日本で負かしてやろう。そう思って
モンジューをやっつけてさ。でも、
年度代表馬は取れなくて…。
グラスワンダーやったら納得できただろうけど、
JRA賞は人の決めるものやし、難しいところもあるんだろうな、と現在でも思うよ」
そう、
JRA各賞は記者投票。記者も権利を持っている一人だが、この投票は常に頭を悩ます。これが後世に影響を及ぼさないものなら、ある程度まで熟慮したところで自分自身を納得させればいい。しかし、
JRA賞はセールカタログなどにも記載されるものであり、競走馬の取引の重要な要素となり得るもの。例えば、自身が詳しく知らない海外の馬が何かしらのタイトルを持っていた場合――。それは間違いなくセールスポイントになるだろう。我々のような立場であれば、特筆したくなる「
キラーワード」。ゆえに責任が伴う。本当に難しいのだ。
「3歳と古馬のカテゴリーに分けられている以上、3歳の代表は同世代の中でのレース結果から選ばれるほうがいいと個人的には思っている。特にダービーは名手と呼ばれる騎手でも簡単に取れないレース。(武)豊も岡部も柴田政人もそう。
福永祐一も泣いてたろ? 価値が違う。でも、それはあくまで自分の考え。絶対ではないんだよね。古馬との勝利を重要視する人もいるだろうし、ダートが主流のアメリカなら
ルヴァンスレーヴで間違いなかったと思うしさ。だから、ポイント制にでもしたらいいと個人的には思う。それなら誰にでもわかる。レースの格で差をつけてさ。よほどスッキリすると思うよ」
個人的にはFIFA加盟国の代表監督、主将に投票権がある「FIFA最優秀選手賞」のように調教師、騎手の投票こそが価値ありと思っているのだが、それではカドが立つかもしれない。ポイント制――。意外にいいかも…と思った。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ