追い切りが集中する水曜と違い、本来の木曜はのんびりムード。しかし、この日(24日)は違った。音無調教師が発表したのは昨夏の
グランプリホース・
ミッキーロケット(牡6)の現役引退。
「間隔を空けたほうがいいタイプ。今年は
京都記念から始動する」との話を聞いたのは、つい先日のこと。戦列復帰に向けてトレセンに戻ってきてもいた。それが急転直下の引退発表とは…。
「実は先週末から怪しい雰囲気があったんだ。検査をした結果、復帰までに半年以上は時間を要するとのこと。当初から今年で引退の予定だったし、このタイミングなら新種牡馬の展示会にも間に合う。
キングカメハメハ、
ロードカナロアと一緒で
サンデーサイレンス系の繁殖牝馬に種付けできる血統だろ? それなら半年も休ませて復帰させるよりも、引退して種牡馬にしようか、という話になったんだ」(音無調教師)
熱を持っている左前の球節は、目で見たくらいではわからない程度の症状らしいが、それでも半年以上の休養が必要というのだから、“ガラス”と表現される競走馬の脚は本当に繊細。本格化を果たした状況での引退は非常に残念だが、北海道新冠の優駿スタリオン
ステーションで第2のスタートを切ることが決まった
ミッキーロケットの今後に期待して、コラムの前半部分を締めておく。
調教技術の進歩などもあって「高齢馬の活躍が目立つようになった」と言われるが、それでも競走馬の
サイクルは早い。まだまだ稼げたはずの
ミッキーロケットの引退をさらりと話した音無調教師の姿を見て、昨年の
有馬記念ウイークを思い出した。
現役最後になる
サトノダイヤモンドを感慨深げに見つめる記者に池江調教師は「俺たちは立ち止まっていられないよ。ダイヤモンドが引退しても管理馬はたくさんいるし、これから新たに入ってくる馬もいる。去っていく馬には感謝しつつ、次のことを考えていかないと。
オルフェーヴルのときだってそうだった」と未練はゼロ。切り替えの早さが必要な職業であることを力説していた。それは今週の音無調教師の姿に重なるものだ。
「来週の
東京新聞杯に出走させる
インディチャンプ? 前走(
元町S)の勝ち方は確かに良かったけど、メンバーも強くなるので楽観はしていないよ」はあくまで表向きのコメント。今年の
東京新聞杯はメンバーが濃いとの噂だが、それも大歓迎。本当のところは、ここを勝ってGIへの道筋をつけたいと意気盛んだ。
おっと、その前に今週の
根岸Sに出走する
サンライズノヴァ。悲願のGI制覇に向け、大事な今年初戦を迎える。「
コパノキッキングに
ケイアイノーテック。一緒に走ったことのない馬との力関係がわからないからね」とこちらも慎重なコメントでオブラートに包んではいるが、もちろん腹の内は違う。
「後ろから行って末脚をハメるだけ。中2週になる
フェブラリーSを考えた仕上げなのは否定しないけど、得意の東京なら走れると思うよ。前走(チャンピオンズC6着)は中京の馬場が合わなかっただけだから」
くしくも今週の調教で併せ馬を行った
インディチャンプと
サンライズノヴァの2頭。引退する
ミッキーロケットに代わって、今年の音無キュウ舎を引っ張る存在になることを期待したい。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ