高知競馬の最終レースに組まれている「ファイナルレース」は、メインレースよりも多く売れるという、いわば高知競馬のドル箱レース。「難解だ」「まったく予想できない」という声が頻出するファイナルレースの魅力に迫るべく、高知競馬専門紙の風間恒一記者と山崎伸浩記者に密着し、記者選抜編成会議の現場に潜入。どのような過程を経て「ファイナルレース」ができているのか、その魅力に迫った。
「まず期初に配られる高知競馬の年間番組表で、『ファイナルレース』がどのクラスの番組かを確認します。ほとんどがC級クラスなので、過去の新聞でタイムや順位を見ながら、その開催に出馬登録してきそうな馬を事前にリスト化します。
事前にピックアップしてリスト化したものを編成会議当日、番組編成委員から渡される実際の出馬登録馬一覧と照らし合わせながら、実際の番組に当てはめていきます」
そう答えてくれたのは山崎記者。通常、
地方競馬の記者選抜レースでは、単純な賞金順のクラス編成では不可能な対決を実現するために隠れた実力馬を中心に記者がピックアップするが、『ファイナルレース』はその発想を逆手に取り、勝てない馬ばかりを集めることによって、ファンの興味をそそる番組へと昇華させた。日程や競走内容などの違いによって多少異なるものの、今では一日の売上げのおおよそ2〜3割を占めるドル箱レースへと変貌を遂げた。
「出走メンバーを決めるにあたり、考慮するのは主に4点です。まずは「過去4走以内に1着がない」こと。転入馬に関しては「高知で数戦走って勝ち星なし」が条件になります。2つ目は「厩舎の
バランス」。これは、特定のレースに同厩舎の馬が固まるのを防ぐためです。
続いて、「時計差がない」こと。高知競馬は馬場状態が変わることが多いので、その時計がどういう馬場状態で走っていたときに叩き出したものか、も考慮します。そして最後は「脚質」です。脚質が偏ると展開的にも読みやすくなってしまうので、そのあたりは気を付けるようにはしています」
この記者選抜編成会議は、いわば「答え合わせ」の場。事前にリストアップしてきた「出たら、面白いだろうな」というファン目線のエッセンスを加えたリストと、実際の出馬登録があった馬とを照らし合わせている。
「極論をいえば、
JRAの
アルゼンチン共和国杯と一緒(笑)。力が拮抗したメンバーになるように近づけて、ゴール前で横一線になるようにするのが大前提ですから、当然、力が抜けた馬は選びません。ハンデ戦のハンデキャッパーのようなもんですよ。どの馬にも勝つチャンスあるように、我々も真剣になってメンバーを組みますからね。陣営もそりゃガチになるき」
土佐弁で雄弁に語ってくれた風間記者だが、実際、出走馬の選出は普段からレースをよく見て、馬の個性まで把握していないとできない仕事である。『ファイナルレース』の売上げが多いのは、そうした本気度がファンにも伝わっている証しなのではなかろうか。そして、山崎記者は最後にこう話してくれた。
「確かに、自分たちで選んだ馬に対して自分たちが予想をするわけですが、最終的に番組編成委員を交えて会議をするので、公正は保たれています。なるべく全馬に展開ひとつでチャンスがあること。みんなが死に物狂いで1着を狙いに来るようなメンバー、そんなメンバーになるように努力しています」
もともと「馬券でやられ続けたファンが収支を一発逆転」するのではなく、実力の拮抗した勝てない馬ばかりを集めたレースで「(勝てば)馬が境遇を一発逆転できる」意味合いで銘打たれた“一発逆転ファイナルレース”。ぜひ夜さ恋ナイターで「懐の一発逆転」だけではなく、「馬たちの一発逆転」も楽しんでみては?
風間恒一、山崎伸浩両記者をはじめ、多彩なプロの予想家が高知競馬・ファイナルレースを予想中。この機会にプロたちの結論を見てみませんか?