平成最後の
桜花賞は、1分32秒7という
桜花賞レコードで決着した。前半800mが47秒7で、後半800mが45秒0。数字だけ見ると、序盤もそれほど遅くはないように思われるが、ゲートから300mほどのところで、4番手につけた
クリストフ・ルメールの
グランアレグリアも、直後の内にいた
クロノジェネシスも、その外の
ダノンファンタジーも、首を上げてやや行きたがっていた。
それでも、ルメールが「いいポジションを取りたかった。最初は4番手で、馬が
リラックスしていた」と話していたように、前半600mあたりで、
グランアレグリアは鞍上の指示を受け入れ、折り合った。
このまま隊列が落ちつくのかと思われたのは、しかし、ほんの数秒だった。ルメールは、
グランアレグリアの行く気に任せるように3、4コーナーで外からマクるように進出し、先頭に並びかけた。
「コーナーでペースが遅くなったので、大外に競りかけて行った。朝日杯から勉強した。前回は速い脚を使えなかったので、4コーナーから動いた。それからいい脚で加速しました」とルメール。
直線に入っても
グランアレグリアは楽な手応えのまま伸びつづけ、ラスト300mあたりで内の馬をかわして先頭に躍り出た。
外から
ダノンファンタジー、
ビーチサンバらが迫ってくると、右ステッキで叱咤し、さらに突き放す。
グランアレグリアは、そのまま2着に2馬身半の差をつけてゴールした。
2着は
シゲルピンクダイヤ、3着は
クロノジェネシス。1番人気の
ダノンファンタジーは4着だった。
ルメールが反省材料とした朝日杯では、外から一気に勝ち馬に併せられ、威圧されるように内にモタれてしまった。
ここは牝馬が相手とはいえ、同じような展開になってトラウマが蘇らないよう、自ら早めに動いて、単走の形に持ち込んだ。
自分の動きたいところから動いて力でねじ伏せる、圧勝であった。
ダノンファンタジーは、前走の
チューリップ賞で、溜めて弾ける競馬をしたばかりだっただけに、勝ち馬のロングスパートに対応することができなかったように見受けられた。
シゲルピンクダイヤは、
ダイワメジャー産駒の「粘っこさが武器」というイメージを覆すような鋭い脚を、前走の
チューリップ賞につづいて見せてくれた。
(文:島田明宏)