桜花賞ウイークの「POG(秘)週報」で、
グランアレグリアの「復権」を予告したのが立川敬太記者。牝馬クラシック2冠目へは向かわず、第24回
NHKマイルカップ(5月5日=東京芝1600メートル)を
ターゲットに定めた新世代の女傑候補の勝算は!?再び藤沢和キュウ舎番の
ジャッジに注目だが…。一方で、この大本命候補がいながらも、推さずにはいられない、令和最初のとっておきの穴馬も要チェックだ。
デビュー前から“追跡取材”を続けてきた
グランアレグリアが、史上初となる明け3歳初戦での
桜花賞V。しかもレースレコードとなる1分32秒7で走破した。当欄の存在意義を高めてくれた走りには感謝しかないが、デビューから1年近くがたとうとしている今、改めて思うのは、クラシックにおける早期デビューの重要性だ。ノーザン
ファームのずばぬけた育成力、そして名伯楽・藤沢和調教師の手腕は称賛に値する。
その藤沢和調教師が先日、
桜花賞時の上がりだけの軽い追い切りが主体だった調整方法に触れ、自らが課した内容にもかかわらず、冗談交じりにこう口にした。「あんな調教で勝つんだから。GIではあり得ないよな」と。さらに単勝3.4倍(2番人気)とデビュー以来、最も“高値”をつけたことについても「GIで休み明けならそんなものだろう。“甘くはない”とファンが考えたのも分かる」。
休養明けに加え、加減した調教だった前走の
桜花賞。勝算はあっても100%の状態ではなかったのだろう。対して今回はといえば「すごく良くなっているよ。メンタル面が成長して、楽に調教ができるようになった」と上積みがハンパないことを隠さない。
昨年暮れの
朝日杯FS(3着)で敗れた
アドマイヤマーズとの再戦に注目が集まるとはいえ、今度は2戦2勝の“ホーム”東京。迎え撃つ立場に世間の見方が傾くのは、もはや自然の流れか。
NHKマイルCも、やはり
グランアレグリアの独壇場…の流れで筆を進ませようかとも思ったが、どうしても“寄り道”をしたい気持ちにさせられる馬が一頭いる。
ヴィッテルスバッハだ。
トライアルのニュージーランドT(3着)は前後半4ハロン差が実に2秒2のスローで、勝ち馬が逃げ切る展開。そんな中、出遅れによる最後方から、4角でも大外を回しながら、一頭だけ次元の違う末脚を見せた。“東京なら差し切れていた”と誰もが思ったことだろう。メンバー最速の上がり33秒3は、2、3回中山で行われた芝マイル戦計20鞍でも最速で、ペースは違えど、古馬重賞のダービー卿CTのそれを0秒1上回ったのは掛け値なしに評価できる。
ちなみに500万下を勝った2走前は32秒9の最速上がりを駆使しているが、これもまた1回東京芝マイル戦計10鞍で、古馬重賞の
東京新聞杯のそれと0秒1差のナンバー2タイと十分に評価に値するものだった。
さらに注目すべき点は昨年8月のデビュー時に438キロだった馬体が、段階的に数字を増やし、前走時は462キロまでビルドアップされたこと。
グランアレグリアの
桜花賞時がデビュー2戦目の
サウジアラビアRCと同じ。それが完成度の一端とするなら、こちらは成長度に見るべきものがある。
「中山でも脚を使えたので、スローの上がり勝負に強いことは分かりました。広いコースに替わるのも間違いなくプラス。ただ、今度はGIですから、これまでよりも流れが速くなった時に、馬群にくっついて行って、同じ脚が使えるかがカギになると思います。それにある程度、流れが速くなっても、前が残るのが今の競馬。特にGIではなおさらです」(池上調教師)
トレーナーからは「GIはそう甘くはないかも」と慎重な言葉も出てはいるが…。一方で「(厳しい状況から地力で)権利を取った馬。体重が増えるにつれて中身も詰まって成長が見られます」と、この馬の進化を誰よりも感じている。
他方、ここ2戦のスタート難は、小さなロスが致命傷になるGIではことさら看過できない課題。ゲート内で馬を縛りつけたりする対策も考えられたが、「前走からの短期間では、ケガや余計に馬が疲れてしまうリスクも伴う。それよりも状態面を優先させたい」と通常程度のゲート練習にとどめ、体調最優先に、自慢の末脚炸裂へと人力を尽くしている。
主役は文字通り世代をけん引してきた「天才娘」
グランアレグリアになる公算大だが…。その陰で静かに牙を研ぐ「伏兵」
ヴィッテルスバッハの末脚にも大いに注目している。
(立川敬太)
東京スポーツ