JRA5頭は、まるできっちり揃えたかのようにダート1800mで2勝という馬たち。かつてであれば賞金を加算したい芝路線の馬や、1勝馬でも出走できる可能性があったが、近年ではデビュー時から迷わずダート路線に決めたり、芝の適性がないと判断すると早い時期からダートに転向する馬もめずらしくなく、
JRAのダート路線の層が格段に厚くなった。
一方の地方勢は、兵庫一冠目の
菊水賞1、2着馬が回避。であれば地方馬はすべて単勝万馬券という評価も仕方ない。まして2016年から昨年まで3年連続で
JRA勢が掲示板独占となっている。しかしながら今回は地元兵庫勢が3、4着に食い込む健闘の走りを見せた。
その要因は、勝った
クリソベリルがあまりに強かったからでもある。
外枠から抜群のスタート切った
ダイシンインディーが行く気を見せたが、
クリソベリル、さらに
ゴールドラグーンも軽く押した程度でスピードに乗り、3頭が併走。離れた4番手に
ヴァイトブリックで、さらに離れた5番手に
メスキータ。スタートして最初の3コーナーまでにこれほど縦長になるのはめずらしい。前はそれほどのハイペース。
クリソベリルの
ルメール騎手は、さすがにそのペースに付き合う必要はないと思ったのだろう、すぐに3番手に控えた。
とはいえずっとそのペースでレースが流れたわけではない。スタンド前の直線から後続勢が徐々に差を縮め、2コーナーから向正面に入るあたりでは、流れについていけない2頭以外の10頭は8馬身くらいの中に凝縮。ペースが落ち着いたところで先行集団のうしろに取り付いたのが
ヴァイトブリックで、地元の
バンローズキングスも一緒に位置取りを上げた。
先行争いを避けた
ヴァイトブリックには絶好の展開になったかに思えたが、3コーナーからの
クリソベリルが圧巻だった。軽く仕掛けただけで一瞬にして先頭に立つと、追ってきた
ヴァイトブリックを直線で突き放しての圧勝となった。
ゴールドラグーン、
ダイシンインディーは、
クリソベリルを負かすにはこれしかないと考えて強気の先行策だったのだろう。それで最後にバテたぶん、地元の
バンローズキングス、
エナキョウが3、4着に食い込む余地ができた。
クリソベリルの勝ちタイム1:57.3(重)は、2004年に不良馬場で勝った
メイショウムネノリとレースレコード・タイ。ただ2分を切る決着が多かった当時と違い、近年は2分台の決着が普通で、2分を切る勝ちタイムは2013年の
コパノリッキー(1:58.4・良)以来のこと。2008年の
JBCクラシックで
ヴァーミリアンが出した1:56.7(良)というコースレコードにコンマ6秒差と迫るかなりの好タイムだ。
クリソベリルの目標はひとまず
ジャパンダートダービーとなるようだが、今年は
ヒヤシンスSまで3戦全勝の
オーヴァルエース、
伏竜Sまで3戦全勝の
デアフルーグという、ここまでダートで負け知らずという馬がほかにもいるだけに、
クリソベリルが断然となるかは未知数。
それにしても、
オーヴァルエースが勝った
ヒヤシンスSで3着だった
デルマルーヴルがその後UAEダービーで4着と好走し、
デアフルーグが勝った
伏竜Sで5着だったのが
全日本2歳優駿を制した
ノーヴァレンダだったということでは、
クリソベリルも含めて、この世代のダートは相当にレベルの高い争いになりそうだ。