桜花賞馬
グランアレグリア不在の中で争われる第80回
オークス(19日=東京芝2400メートル)は別線組が注目を集めている。東ではレーンが騎乗する
フラワーCの覇者
コントラチェック、そして西では
忘れな草賞で無傷のV3を決めた
ラヴズオンリーユーだ。ご存じ、GI馬
リアルスティールの全妹。果たしてその器の大きさはいかに!?「POG(秘)週報」で松浪大樹記者が
ラヴズオンリーユーの実像に迫る――。
ダービー(2015年4着)でも、
ジャパンC(16年5着)でも、本命に指名した
リアルスティールには、他の記者には負けない、熱い思いを持っている自負がある。
ドバイターフ(1800メートル=16年)を勝った実績を持ち出すまでもなく、能力は世界レベル。これは疑いようがない。しかし、2400メートルのカテゴリーで◎とした自身の結論は、改めて振り返ってみたときにどうなのか? そして、その考えは
リアルスティールの全妹
ラヴズオンリーユーに対しても当てはまるのか?
妹が併走馬を圧倒する動きを見せるたびに「モノの違いで距離はなんとかなる」。そんな気持ちを持ってしまう。が、それは兄のときも感じた思い。だからこそ、管理する矢作調教師の考えを聞く必要があると感じた。
「正直に言えば、人気になり過ぎだと思うよ。多頭数の競馬を経験したことがないし、行きたがるようなしぐさを見せた前走のレースぶりに不安を感じてもいる。そもそもが最初から
オークスを狙っていた馬ではなく、
桜花賞に出したかったけど、出せなかった。そういった背景がある馬だからね。2400メートルはベストじゃない。先々はもっと短い距離に適性を見いだしていく馬になると思う」
古馬になり、適性がより明確になっていた
リアルスティールの
ジャパンC時でも、距離克服の可能性を示唆していたトレーナー。当時と比較すれば、歯切れが悪い発言に感じた。
額面通りに受け取れば、今回の一戦は評価を下げるのが正解? いや、それでも簡単に引き下がれない魅力が
ラヴズオンリーユーにはある。それは兄の
リアルスティールと明らかに違う部分。その部分をクローズアップすれば、矢作師の「人気になり過ぎ」をうのみにできなくなってくる。
何度か追い込みを見せた
リアルスティールだが、最良のパフォーマンスは
ドバイターフであり、それは「ある程度の位置を取っても、長くいい脚が使える」ことを意味している。これは
ラングレー、
ジンゴイストといった自身の管理する「きょうだいたちにも共通する特徴」と矢作師は言う。
しかし、
ラヴズオンリーユーだけは明らかにこれらとは違う。デビューから3戦すべてで上がり最速をマーク。兄たちと異にするキャラは、東京の長い直線でさらに威力を増すことだろう。
何よりも心強いのは「牝馬なのにイレ込む心配をしなくていい」ところかもしれない。
リアルスティールは装鞍のたびに激しく抵抗。まともに鞍を置けたレースがほとんどなかったと聞いている。レース前の消耗は他馬の何倍もあったはずだ。
対して
ラヴズオンリーユーはそんなそぶりをまるで見せず、パドックでもゲート裏でも常に落ち着いている。初めての2400メートルだけでなく、初めての長距離輸送も克服しなくてはならない状況において、この高い精神力が大きな武器となる気がする。
リアルスティールよりもこなせる距離のレンジは広い――。これが
オークスの最終追い切りが終わる前の記者の考えだ。
攻め不足だったデビュー戦。その反動でカイ食いが落ちた2戦目の
白菊賞。牧場からの帰キュウが遅れ、なんとか間に合った印象だった前走の
忘れな草賞。絶好調と思える状態で走っていないのにもかかわらず、その状況で見せた圧巻のパフォーマンスによって、
ラヴズオンリーユーが人気を集めることは避けられない。
「
オークスというのは特殊なレースでさ。2400メートルの距離ではあるけど、ほとんどの馬がそこに不安を抱えてレースをするから、スローの瞬発力勝負になりやすい。そのような状況になったときにモノをいうのは純粋な能力だと思うんだよね」(矢作調教師)
無理やり引き出した前向きコメントだったかもしれないが、個人的にはこれが最も心に響いた。
「
ラヴズオンリーユーも能力は間違いないモノがある。ただ、それを差し引いても少なくない不安はある」と締めたトレーナー。今後もいつものようにラッパを吹くことをしないかもしれない。だが、それは決して彼女の能力を疑ったものではないことを強調しておく。
(松浪大樹)
東京スポーツ